耐震偽装事件の再発防止を狙った改正建築基準法の施行から5カ月がたち、新しい建築確認制度を支えるチェック機関で、構造計算の専門家不足が表面化して きた。全国から審査案件が集中する東京の機関では8割で新規受け付けに遅れが出ており、マンションなど大型物件の着工減の要因となっている。チェック機関 のマンパワー不足は新制度の構造的な欠陥にもなりかねず、国土交通省も対策に乗り出した。
6月に始まった新制度ではマンションなど一定規模以上の建物の構造計算を再チェックする「構造計算適合性判定機関」を新設。判定員は1級建築士で構造計算の十分な実務経験があることなどが条件で、国交省は2度の講習会で1929人を有資格者と認定した。
判定機関は全国に43(公益法人28、NPO1、民間会社14)。自前で判定主体となる一部自治体を含む全国57判定機関・道県に朝日新 聞が判定員の確保・稼働状況を聞いたところ、各機関が雇用・契約している判定員の総数は約1530人と判明。常勤は約120人で、9割以上の約1410人 が非常勤だった。
都内11機関のうち9機関は、現在、新規の受け付けに即応できない状況と回答。「一部はお断りしている」(財団法人)「2カ月先でないと受けられない」(民間)という機関もあった。多くの機関が判定員の募集を続けており「奪い合い」と話す担当者もいる。
判定機関は、都道府県知事の指定を受け、それぞれの域内の物件を判定する。判定員の資格者は地方には少ないため、都内9機関は複数の自治体から指定を受けている。規模が大きく審査に時間のかかる物件ほど全国から集中する傾向にある。
国交省は適合性判定の対象物件数を「月に約5000件」と推計。「1週間に1日(8時間)勤務する判定員が約1500人いればこなせる」 と想定している。だが、非常勤の大多数は設計事務所やゼネコンの設計部門に勤務。判定員業務はいわば副業で、判定機関からは「月1、2回仕事をしてもらう のがやっと」「実際に稼働している人は6割程度」という声が聞かれる。11月時点で判定ペースは月1000件強にとどまる。
国交省は当面の対策として、判定員資格者を増やすための3度目の講習会を来年2月に開くことを決めたが、ある判定機関の担当者は「頭数だけ増えても非常勤の稼働率が上がらないと意味がない」と話す。
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