リクルートは21日、人材派遣最大手のスタッフサービス・ホールディングス(HD)の買収を正式発表した。両社を合計した派遣事業の売上高は5千億 円を超え、派遣分野では2位以下を大きく引き離す。巨大グループの誕生をきっかけに、外資を交えた業界再編の動きも進みそうだ。
人材派遣業の状況
スタッフサービスHDの創業者の岡野保次郎会長は、同社株の約80%を保有する。リクルートは28日付で、岡野氏が持つ全株を約1700億円で買い取る。リクルートは残りの株式も買い取り、完全子会社化する方針だが、当面は社名を変更せず、別々に事業を展開する。
21日に記者会見したリクルートの中村恒一取締役は「業界下位だった派遣事業の強化が課題だった」と、買収の理由を語った。もともと強い求人広告と人材紹介に加え、派遣事業でも業界首位に立ち、人材サービスの総合力を一気に高めた。
リクルートは、バブル期の不動産やノンバンク事業の失敗で抱えた1兆円を超す負債を、06年度までにほぼ一掃した。原動力となったのが、「就職ジャーナル」や結婚情報の「ゼクシィ」といった情報誌の広告収益だ。
ただ、「ドル箱」の広告事業も、インターネットの普及によって広告単価は低下傾向。他の求人サイトとの競争も激化しており、収益の伸びの鈍化が予想される。派遣事業を拡大することで、今後の成長を下支えする考えだ。
傘下に60社を超す企業を抱えるスタッフサービスHDを買収したことで、リクルートのグループ企業数は約140社に増えた。グループの膨張で「売上高1兆円」の目標は達成するものの、相乗効果をいかに引き出すかが課題となる。
人材派遣市場は、対象職種の原則自由化(99年)や製造分野への派遣解禁(04年)などの規制緩和を背景に拡大を続けた。現在は中小を含め、100社超の企業が乱立している。
好調な企業業績を受けて、人材派遣への需要は多く「働く側が仕事を選べる環境にある」(パソナグループ)。地方に出向いて募集するなど人材確保に苦労し ており、経営コストが上昇しているという。「多様な人材を多く集めるためにも、買収や提携に動くのは自然な流れ」(関係者)だ。
今後の再編の焦点となりそうなのが、パソナやテンプスタッフといった国内勢に加え、欧米大手の動向だ。スタッフサービスの入札をリクルートと最後まで争ったのは、米大手マンパワーだった。
世界最大手のアデコグループ(スイス)の売上高は約3兆円と、日本の「ガリバー」リクルートを圧倒する。巨大な資本力を武器に、外資が攻勢に出る可能性は高いとみられている。
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