外国人留学生を日本の企業に積極的に受け入れてもらい、新たな労働力を確保しようという取り組みが進んでいる。少子化の影響で将来、労働人口が激減する のに対応した動きで、大阪ではこのほど、企業の人事担当者向けの「外国人留学生採用促進セミナー」が初めて開催された。大学で学ぶ留学生を対象にした人材 養成プログラムも今年度から始まり、同様の動きはさらに広がりそうだ。
◆74社の人事担当者が参加
大阪市内で開かれたこのセミナーには、関西地区の食品や化粧品メーカー、IT関連など74社の企業の人事担当者らが参加。外国人留学生の就職状況や、留学生を実際に採用している伊藤忠商事などの雇用事例の紹介を熱心に聞き入っていた。
主催したのは、語学や医療福祉関連など府内の専修・各種学校199校が加盟する「大阪府専修学校各種学校連合会」(大専各)。各校で学ぶ留学生の存在を企業側にアピールする狙いもあり、これをバックアップする形で大阪商工会議所や関西経済連合会なども後援に名を連ねた。
こうしたセミナーの背景には、少子化に伴う15歳以上の労働人口の急激な減少傾向がある。厚生労働省の推計では、今後、雇用対策が進まなければ、2030 年には約1070万人も減少し、労働市場が大幅に縮小する恐れがあるという。政府の教育再生会議が今年4月、2025年までに100万人を目標に外国人留 学生の受け入れ整備を図る方針を打ち出したのも、こうした事情が一因となっている。
しかし、留学生の就職となると、極めて厳しいのが現状だ。専修学校などの留学生の場合、日本語を学んだうえで「専門士」の資格が必要になるが、昨年度日本 企業に就職できたのは約11万7000人のうち1割以下の約9000人に過ぎなかった。その原因について、大専各留学生部会長の長谷川惠一氏は「日本の企 業にはもともと、言葉や商習慣の違いから外国人の採用には抵抗感があり、この閉鎖性により留学生も日本での就職は難しいと考えているから」とし、「民の側 もきちんと受け入れ態勢を整えなければ、労働力不足だけでなく、人権侵害などさまざまな問題が起きる」と指摘する。このため、大専各では今年4月から留学 生部会を立ち上げ、今回のセミナーを企画。来春には、企業と留学生が直接顔合わせの機会を持つセミナーを予定するなど、積極的な活動を進めていくという。
一方、経済産業省と文部科学省が今年度からスタートさせた「アジア人財資金構想」も、外国人留学生をめぐる人材活用のひとつ。アジアから来日したり、日本 の大学や大学院で学んでいる留学生を毎年900人、大学側と企業が産学連携で受け入れ、日本語やビジネス教育、企業実習などを進めていくプロジェクトだ。
近畿経済産業局の坂本慎一郎・産業人材政策課長補佐は「IT産業に力を注ぐインドをはじめ、アジアの優秀な頭脳がいま、どんどん欧米に流出しているだけ に、日本企業もこれまでの商習慣の壁を乗り越えなければ、国際的な知的ネットワークから取り残されることになる」と話している。
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