県中小企業団体中央会が把握する県内の事業協同組合で、外国人研修生・技能実習生の受け入れ実績がある32組合のうち27組合が、旅券(パスポート)を組合か構成企業で一括管理していることが、同会のまとめで分かった。同会は、紛失防止が主な理由で管理の強制には当たらないとみているが、「十分な説明がなかった」「返還を求めても応じない」と訴える研修生もいる。
同会が把握していない組合や企業でも旅券などの管理は広く行われているとみられる。全国では外国人研修生らを束縛しているとして社会問題化する例が相次ぎ、法務省は近く公表する「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の新指針で、旅券や外国人登録証明書の組合・企業による管理を「不正行為」と明記する方針だ。
県中小企業団体中央会は、旅券と定期積立の通帳を一括管理していた中信地方の組合に11月、市民団体「外国人研修生問題ネットワーク・長野」(長野市)が改善を申し入れたことを受け、会員が構成している40の事業協同組合にアンケートした。
この結果、研修生・実習生の受け入れ実績がある32組合のうち、旅券を本人が管理しているのは4組合にとどまった。ほかに「受け入れ企業によって異なる」が1組合。それ以外は、組合か構成企業が一括管理していた。
また、預金通帳の管理状況も調べたところ、本人管理は11組合で、「受け入れ企業によって異なる」が5組合。残る16組合は、組合か構成企業で管理していた。
旅券は本人所持が原則。雇用主が貯蓄を管理する「強制預金」も労働基準法が禁じている。東京入国管理局長野出張所は「預かる場合は研修生側と合意し、文書も交わすよう指導している」とする。
これに対し、県中小企業団体中央会は、組合側が管理する目的は「紛失・盗難防止」で、旅券は「半年に1回の在留許可の更新や変更手続きの際に煩雑を避ける意味もある」と説明。通帳についても生活費は本人が管理しており、少なくとも把握している組合については、強制性はないとの見方だ。
数100人規模の中国人研修生を受け入れている東信地方の組合では研修生の失跡が毎年数件起きている。この組合専務も「旅券を置いたまま別の仕事を求めていなくなる例もあった。仮に逃走を防ごうと預かったとしても気休め」と打ち明ける。
一方、研修生側には疑問がくすぶる。東信地方の建設現場で働く複数の中国人も旅券は組合が管理しているが、口々に「入国するなり『預かり証』に署名させられた」「署名しないと働けないと言われた」と証言。30代の実習生は、雇い主に旅券の返還を求めたが拒否されたといい、「中国人だからと見下されているようだ」と憤る。
出国前に現地の送り出し機関が「契約書」への署名押印を求める例もあり、中信地方の20代の中国人女性実習生は「問題が起きた時いつ送り返されるか」と不安を口にする。
こうした状況を踏まえて、旅券の返還を始める組合も出ている。県中小企業団体中央会は「研修生らと企業側との間の合意が十分だったかには課題がある」とし、改善を促すという。
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