海外に日本語をより一層普及させていくためには、政府や関係機関が総合的な施策を練る必要がある。
国際交流基金が最近発表した昨年度の調査結果によると、海外の133の国と地域で、298万人が日本語を学んでいる。2003年度の前回調査より62万人増えており、調査開始時の1979年度と比べると、その数は23倍に上る。
経済財政諮問会議は2010年までに「300万人程度」とすることを目標に掲げていたが、早くもクリアした。
多くの外国人が日本語を学ぶことで、日本の社会や歴史文化に対する国際社会の理解も深まる。世界から多くの優れた人材を、留学生や働き手として迎え入れていくことにもつながるだろう。
海外の日本語学習者の約6割は、小中高校の授業で学んでいる。韓国では高校の第2外国語の一つとされ、オーストラリアやアメリカでは、小学校から日本語を教えている事例もある。
日本の漫画やアニメなどに触れ、日本語に関心を持つ若者も増えている。
しかし、課題も少なくない。アメリカでは、最近の3年間で日本語学習者が14万人から12万人に減少した。アメリカの教員資格を持つ日本語教師の不足や、日本語に代わり中国語への関心が高まっていることが背景にある。
中国政府は、外国人に対する中国語教育の拠点として「孔子学院」を世界500か所に設立する計画で、中国語の海外普及に積極的に乗り出している。
国際交流基金が日本語講座を開いている海外拠点は、10か所にすぎない。出先の数だけがすべてではないが、学習者の増加に応じた体制を整備していくことが必要だ。教師の養成や新たな教育プログラムの開発、日本語能力試験の実施体制の整備をはかることが大事だ。
フィリピンからは経済連携協定(EPA)に基づき、最大1000人の看護師や介護福祉士を受け入れる予定だ。来日後に日本語研修が行われるが、現地の日本語教育が拡充されれば、言葉の壁の解消に役立つだろう。
日本国内では、日系ブラジル人労働者の子供たちなど外国籍の児童生徒7万人が公立の小中高校に通っている。そのうち2万2000人が、日本語が分からず授業を理解出来ずにいる。
文部科学省は来年度から、非常勤職員の雇用を財政支援し、授業の通訳や日本語の指導に当たらせる方針だ。
国際交流基金や文科省、経済界などが連携を密にしながら、外国人が日本語を学ぶ環境を整えていくべきだ。
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