2007-12-30

インドのオフショア開発、成功の第一歩は資本参加

:::引用:::
10月末、3カ月ぶりに中国 大連空港に降り立った。着陸寸前まで揺れがひどくて久々に怖かった。空港ビルを出ると生憎の雪模様である。10月に雪が降るなんてまったく考えてもなく、 防寒着を持っていなかった。夜などは突き刺すような痛みの寒さである。それで風邪を引いてしまい、前回のコラムはお休みさせていただいた。(竹田孝治のイ ンドIT見聞録)
 今回の大連行きは、IT教育と日本語を教える新しい学校ができたということで訪問させていただいた。実のとこ ろ、私は中国の民間における日本語教育というものには懐疑的であった。従来からもそのような民間の教育機関はあったのだが、二度と行きたくない学校ばかり であった。
 なぜなら日本のソフトウエア開発における製造工程の下請け的な会社が多く、日本語教育の目的も日本語で書かれた 仕様書を読むための教育が主だからだ。コミュニケーション能力という面では意味を成さない場合が多い。日本語能力検定1級取得者は多いが、インド人の日本 語能力検定3級合格者とほぼ同等だと考えている。もちろん大学における日本語教育はしっかりとしている。
 しかし今回、訪問した学校は日本語教育のレベルが違った。言語教育専門の日本人講師が、発音から徹底した訓練を行っている。プロの講師である。やっと大連にもまともな日本語教育機関ができたのかと、楽しみである。
 さて、インドの話題に移ろう。先週のNTTデータのニュースリリースによると、同社はインドのバーテックスソフ トウエアの株式を取得し、連結対象の子会社にするとのことである。バーテックス社はインド西部のプネ市を本拠とし、日本および米国向けのオフショア開発を 事業主体としている会社である。私は同社を訪問したことはないが、インドでもっとも日本語教育が盛んなプネで日本向けのソフトウエア開発を行っている会社 として名前だけは知っていた。
 プネ市はインドの中で研究学園都市として発展し、スーパーコンピューターを自前で開発したという実績もある。ま たプネ大学の日本語学科を中心として日本語教育が非常に盛んであり、日本語能力検定試験も実施されている。たぶん、インドにおける日本語教育では最高の都 市であろう。
 ただし、残念ながら国際空港がなく、日本から遠いインドの中でも最も遠い都市のひとつである。日本を出発して必 ずインドの他の都市で1泊しないと行くことができない。私が拠点にしているチェンナイからは直行便もなく、バンガロール経由で3時間以上かかるのがネック である。
 しかしそんなことは大きな問題ではない。インドに日本企業のソフトウエア子会社ができたというのには驚かされ た。今までNECとか富士通などのコンピューターメーカーがインドにソフトウエア開発の子会社や合弁会社を設立してきたが、私の知る限り日本の大手インテ グレーターとしては今回が初のケースではないだろうか。
 私は資本関係のない海外の企業に開発を委託する「オフショア開発」というソフトウエア開発形態は非常に中途半端 だと考えている。どんなに優秀な経営者やマネジャー、先進的な技術者がいてもその企業の経営権を握らない限り、きちんとした自社向けの開発体制を作らせる ことはできない。
 もちろん一過性のソフトウエアを開発するだけならそんな必要はない。しかし長期的なソフトウエアの保守まで含めると、あまりに企業文化が違いすぎる「インド企業」では任せられない。経営の意思統一が徹底できる環境が必要になってくる。
 日本のインテグレーターの中で最も早くインドにおけるオフショア開発を立ち上げたと自負している私としては、オフショア開発の限界もわかっているつもりである。是非とも今回の子会社化の成功を願う次第である。
 話は変わるが、11月9日はヒンズー教最大の祭り、ディワリが行われた。最南端のケララ州ではあまり盛んではな いようだが、インド全国で「光の祭り」が行われた。「富」の神様であるラクシュミー女神を祭り、日本の新年のように新しい服を買い、大掃除もし、身を清め てこの日を迎える。


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