2007-12-19

日本を取り巻く、印中韓のIT技術者事情

:::引用:::
先日、インドから帰国したが、自宅には戻らずそのまま成田トランジットで韓国に向かった。ソウル郊外の大学が日本 語とITを教えて日本に技術者を送ろうとしているとの話を聞き、見学に行ってきた。韓国の日本語教育は中国と較べて優れているとは聞いていた。以前から興 味はあったのだが、まだ見たことはなかった。そもそも韓国に行くのは初めてである。(竹田孝治のインドIT見聞録)

 教育カリキュラムを見せていただき、21人の学生の面接をさせていただいた。この21人が韓国の大学の中でどのようなレベルを占めているのかはわからないが、率直な印象を書いてみよう。

・中国の民間教育レベルと較べて、格段に会話能力が上である。しかし日本語学科卒業者の会話レベルでは中国の歴史のある大学の学生の方が上だろうか
・会話能力だけでなく、考え方などが非常に日本人に近い。インド人、中国人技術者を使うことと比較すると、韓国人の方が日本企業としては使いやすいように思えた。もっとも、単価から考えるとオフショア先としての韓国には魅力はないが
・IT教育のレベルは低い。中国も同じであるが、ソフトウエア工学をきちんと教えるのではなく、プログラミング言語として何を勉強すれば良いかという点に主眼がいっている。大卒のプログラマー(ワーカー)を大量に育成して何の意味があるのかということを考えていない

 以上のようなところだ。全体としては、IT教育をもう少し工夫すれば、日本でのプログラマーとしては使えるとの印象を受けた。

 さて、今回が今年最後のコラムである。この1年でインドのIT産業がどのように変化していったであろうか。10 -12月期の各社の決算はまだこれからであるが、概ね絶好調のことであろう。サブプライム問題では一部のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) 業務を除いてほとんど影響を受けていない。

 不安材料としては急激なルピー高であるが、現在のところ大手IT企業の業績には目立った影響は出ていない。人材 確保とルピー高対策の意味でも、今後ますます開発拠点の国際化と要員確保の多国籍化に拍車がかかるであろう。インド国内では人材を集めるのが難しく、人件 費が高騰している。ルピー高を逆手に、彼らは世界中で技術者の確保にやっきとなっている。

 典型的な例が中国である。中国国内市場でIBMなどの欧米企業と争い、受注案件の大部分は中国で開発する。米国などでも採用を推し進め、上流工程への参画も強めている。

 面白いのは、インド国内市場には興味がないように思えることだ。たしかにIT市場規模という意味ではインドはまだまだ途上国であり、マーケットとして魅力を感じていないのかもしれない。反対にIBMはインド国内市場を攻めている。

 日本サイドから見たインドIT産業の活用という面ではどうか。残念ながら、この意味ではほとんど進んでいるよう には思えない。富士通が技術者1万人を確保する方針を示したり、NTTデータのインドIT企業買収などのニュースはあったが、まだまだである。日本のオフ ショア先として、いかに活用できるか。コストの低減を狙った開発の安易な丸投げによる失敗の話を今でも耳にするが、あまり利用方法に進歩がみられないのが 現実であり残念である。

 IT産業の話とは限らないが、この1年でもっとも感じた点をあげてみよう。

 やはり車の増加が激しい。バンガロールの交通渋滞などは今更の話であるが、私が拠点とするチェンナイでも一気に渋滞が増えてきた。

 街の様子はどうか。携帯電話の広告の看板がやたらと増えたことか。携帯電話の販売台数ではついに中国を抜いて世 界一になった。新規契約者が月間800万人にも達する市場であり、ボーダフォンが口火を切った宣伝合戦は凄いものである。日本企業では車を除くと、ソニー の「VAIO」の宣伝が目立つようになってきた。

 あとはやはりホテル・マンションの値上げラッシュと人件費の高騰である。外国人向けアパートなど、平気で年間 50%以上の高騰である。私が親しくしているインド人がいる。少し日本語を話すことができるが、決して堪能であるとは思えない。それでもインドでは評価さ れているようだ。彼は隣の会社に移ったが、日本語を少し話せるだけで給料が2倍になったと喜んでいる。

 中国の日本向けオフショアも見てみよう。中国資本の企業では、一部の大手企業はますますオフショア開発の受託を 拡大している。しかし大多数の小規模なソフトウエア会社では一気にオフショア業務が激減しだした。IBMなどの欧米企業やインド大手によって人材採用が激 化し、特にマネジャー層の引き抜きが目立つ。小規模な企業ではオフショア開発の体制を維持するのが困難になっているのだ。

 その結果、プログラマーだけが余って、彼らを日本に派遣するしか業務を確保することができなくなった。淘汰が始まったのだろう。私も大連で日本語を話すマネジャーを何とか採用したいと考えているが、非常に困難である。


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