会社の帆布製品製造部門が廃業になったのは、外国人研修・技能実習制度で雇った中国人女性研修生が仕事をボイコットしたためとして、四日市市の清 掃会社「三和サービス」が、研修生7人に約2750万円の損害賠償を求めた全国的にも異例の民事訴訟。17日、津地裁四日市支部での第1回口頭弁論後、裁 判所の和解勧告を受け、非公開で両者が話し合ったが、主張は平行線のままだった。裁判所は、来年1月9日を和解期日としているが、和解が実現するかどうか は不透明な状況だ。
「日本でも最も弱い立場の人間に多額の賠償を請求するとは、前代未聞の訴訟」。口頭弁論後に会見した研修生側の指宿昭一弁護士は憤りをあらわにし た。会見には、20-30代の中国人女性研修生5人も同席。その1人(33)は、ボイコットしたとされる日は「休むことは会社の了承を得ていた」と同社側 の訴状に全面的に反論した。同社社長(61)から、休んだ日に暴力を受けたことも明らかにし「暴力を受けたり賃金の不払いをされ、私たちが訴える立場なの に、逆に会社が訴えるなんて許せない」と語気を強めた。
研修生側はこの日、同社を反訴し、不当解雇後の不足賃金▽未払いの時間外労働賃金▽残業割り増し分に当たる「付加金」-の計約800万円の支払いを求めた。
5人は、2005年4月と8月に外国人研修・技能実習制度で来日。同社で車のシートを縫う作業に携わった。時給300-400円の低賃金で、多い時には1カ月に171時間も残業したが、約45万-54万円の賃金が未払いという。
これに対し、社長は「残業代はちゃんと払っていた」と反論。暴力行為などに関しても「いすをけるなどしたが、暴力は振るっていない。解雇もしていないし、向こうが仕事を辞めて中国に帰ると言ってきた」と主張している。
指宿弁護士によると、話し合いで同社側は、賃金や残業代の不払いはないとして一銭も払わない「ゼロ和解」を主張。研修生側は最低限の未払い賃金と滞在費の支払いを要求し決裂したという。
◆研修生制度 賃金トラブル相次ぐ
外国人研修生をめぐっては、雇用会社の間で賃金の支払いなどについてのトラブルが全国的に相次いでおり、名古屋市や熊本県、福井県などで、研修生が賃金の支払いなどを求め、雇用者を訴えた訴訟4件が現在も係争中だ。
外国人労働者と雇用者間の問題などを扱う、日本労働評議会愛知県本部(名古屋市)も「賃金の支払いをめぐる相談が一番多い」と説明。同本部には昨年から今年にかけ、三重、愛知、岐阜3県では50件以上の相談があったという。
同本部の豊岡真弓委員長は「雇用者に賃金の支払いを求めても、国に帰れと言われ泣き寝入りする人も多い」とする。
国際研修協力機構によると、2006年に同機構の外国人研修・技能実習制度を利用して働き始めた外国人は、県内だけで2602人。前年より約700人増加し、東海3県では約2300人増えている。
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