2007-12-30

中国の人身売買の実態 銀熊賞の李楊監督に聞く

:::引用:::
中国で今も大きな問題となっている女性の誘拐・人身売買の実態を描いた映画「盲山」が23日から正式に中国で上映される。メガホンをとったのは李楊監督。かつて「盲井」でヤミ炭坑問題を告発した社会派監督に、人口抑制政策の結果、20年後に約3700万人の“男余り”に直面するとされる中国における女性人身売買問題について聞いた。「中国では女性が無差別に誘拐され、農村に嫁として売られる。売られたあとは、繰り返しレイプ、暴力を受け、逃げる気力も奪われる。近所の人も地元警察 も、みんなその事実を知っているのに彼女らを助けようとせず、実の親ですらレイプを受けた娘の帰郷をメンツを気にして喜ばない。中国人はなぜ、こんなに人 の心、善良さを失ってしまったのか…」
 李監督は前作の「盲井」が当局の怒りに触れ、3年間にわたり国内の上映・制作禁止処分を受けていた。映画 を撮れないその時間に、誘拐され農村の嫁として売られ、その後救出された女性約40人のケースを徹底的に取材。制作解禁となった06年、これら女性の実話 をもとに台本を書き上げ、自らかき集めた480万元(約7200万円)というローコスト、2カ月という短時間で映画を完成させた。

 「売 られた女性たちは多くが農村出身だが、大学生もいた。麻薬依存症の恋人に麻薬代のために売られた女性もいたし、わずか14歳で売られた娘もいた。値段も 5000元(約7万5000円)から1万元(約15万円)以上といろいろ。仕事を紹介する、といってだまされたり、路上を歩いていていきなり拉致される ケースもあり、ひとりひとり状況は違う」
 中国では改革・開放後、都市と農村の格差が拡大するに従って、女性は都会に出稼ぎにいき、貧しい農村の 男性に嫁ぎたがらなくなった。これにより女性の人身売買市場が急激に拡大。「ピークは1990~95年ごろで、この間に救出された女性は8万5000人と 発表されたが、これは氷山の一角」という。近年は販売先が売春窟にも広がり、最近も昨年6月から9月にかけて、夜間路上を歩いている女性13人を相次いで誘拐、レイプしたのち売春窟に売りとばした18人組の誘拐団の裁判があった。

 背景には根強い男尊女卑思想、人身売買を取り締まる法律の不備、拝金主義の蔓延(まんえん)、地方官僚、公安当局の腐敗などが複雑に絡み合う。胡錦濤国家主席が「科学的発展観」の路線を推進する方針を示した。これは、成長至上主義から脱却し、所得格差の是正や環境問題の改善に取り組む姿勢を打ち出したことになる。それに加えて、2020年までに「小康社会」を築き上げるという目標を掲げたのである。

 小康社会とは、いくらかのゆとりを持って成り立つ社会を意味していて、これまで目の色を変えて経済発展を目指した国としては、あまりにも速い変わり身だ。 GDPを20年間で4倍増とする経済指標もあり、 中国は国際的な位置における発展と国内のインフラという2つの難関に取り組まざるをえないのである。そこに中国の苦悩が浮き彫りになる。

中国映 画で『あの子をさがして』(チャン・イーモウ監督)という作品がある。貧しい農村の少女が、村の過疎化の中で教師となって子供たちを教えていく筋書きだ が、その少女自身が貧しさゆえにお金のことばかり村長に訴える。子たちの教育などに熱心になるはずもない。そして、彼女の生徒の一人が都会に向けて家出し たところから、ストーリーは急展開する。この少女は、周りを見渡しても白茶けた山しか見えないような寒村から、人ごみでにぎわう都会に出て、家出した子供 をさがす。もうすでに、都会と地方の格差は明確に描かれていて、都会の人々を見ると、この中からいわゆる富人が生まれても不思議ではない。

  家出した少年は食堂で働き、主人から食べ物を与えられている。その2人がようやく巡り合うシーンは感動的に描かれる。そして、この2人は村に帰り、学校の 子供たちと一緒にまた日常に戻っていく。少年の捜査に協力したテレビ局から贈られたチョークで、黒板にみんなで字を書いて騒いでいるシーンで、この映画は 静かに終わる。

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1 件のコメント:

max さんのコメント...

 李楊監督 『盲山』を検索し、御ブログに来ました。

 中国だけではなく、ハイチやタイなどでも人身売買、幼児売春や臓器売買のために子供が売られているようです。

 『闇の子ども達』がタイ政府からタイ国内での放映を握り潰されましたが、政府自体が認めているのと同様な気がします。これは、中国にも当て嵌まる事柄だと思います。