2007-12-17

労働者の取り扱いや人事管理関連の悩み

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最近中国ビジネスの現場では、進出企業の悩みが変わりつつある。かつては中国の法律がころころ変わるので分からないといった不満が多かったが、法整 備などが進み、日本の弁護士事務所の中国進出も増えたため、こうした不満はかなり減った。しかしその一方、労働者の取り扱いや人事管理関連の悩みが急増し ているといった話をよく耳にする。

来年1月1日から、労働関連の重要法律「労働契約法」が発効する。この法律の最大の特徴は、労働者保護に力点を置くよう中国政府の立場が変わり始め た点であると言えるだろう。今までは、企業誘致に目を奪われた中国政府が、企業の言い分を重視して弱者である労働者の利益を無視してしまうケースがかなり 多かった。その意味では、労働者に対する雇用の保障、待遇の改善などを求める今のやり方は当然といえば当然だ。

実際、労働者の権利意識への目覚めも目を見張るものがある。時にはウルトラC級の知恵で企業に対して権利を主張する労働者もいる。実際に私が企業の現場で経験したいくつかの例を紹介しよう。

長江デルタに進出しているある日系企業では、金型修理部門で管理職をしているある男がひそかに不正を働いた。会社からその不当行為を指摘されると、 逆に工員たちに職場放棄を呼びかけ、会社に圧力をかけようとした。その男の妻もこの工場で働いていた。男の妻も表面上は普段通りに職場に出ていたが、ひそ かに旦那の行動を応援していた。会社側は男に対して即解雇という処分を与えた。だが、男のほうも転んでもただでは起きず、直ちに労働仲裁所に不当解雇とし て訴えた。結局、その狙いは失敗したが、会社側は事件の解決にかなりの労力を費やさざるを得なくなった。

しかし,この件はこれで終わったわけではなかった。一度にたくさんの敵を作らないようにと、会社は男の妻には処罰を与えなかった。半年後の労働雇用契約書の書き換え時に、契約を更新しないという手で彼女の問題を解決しようとした。

労働契約書の書き換えの1カ月前である5月末に、人事幹部は彼女を事務所に呼び、労働雇用契約はこれ以上更新しないと告げた。すると彼女はなにも言 わずに承知したと答えたものの、返す刀で一通の書類を人事幹部に渡した。人事幹部はこの書類を見て仰天した。病院が発行した妊娠証明書だった。彼女は2カ 月前から妊娠していた事実が明るみになった。

日本の労働基準法に当たる中国の労働法では、妊娠中の女性労働者を解雇することができないとしている。厳密に言えば、妊娠期間中、出産期間中、哺乳 期間中の女性従業員の労働契約を解除することはできないとなっている。国務院が制定した「女性従業員労働保護規定」の第四条、および江蘇省が制定した「女 性従業員労働保護方法」の第五条では、この3つの期間中の女性従業員に対しては、「労働契約の解除」ばかりではなく「基本給の引き下げ」も禁止している。

もちろん、この三つの期間中に著しく労働規律に違反した過失などがあれば解雇は可能だが、はっきりした違反がない場合は難しい。その女性は労働法の こうした規定を理解しており、労働契約の書き換えを迎える4カ月前から妊娠に向けてしたたかに対抗措置を準備していたのである。


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