2007-12-25

拡大する「組込み系ソフト」のオフショア開発

:::引用::

  今回は組込み系ソフトの中国オフショア開発について簡単にご報告したいと思います。

◆業務アプリ以外の分野でも

  中国オフショア開発は、1990年代から少しずつ拡大し始めました。当時から現在まで、中国オフショア開発では、他の諸外国と比較して圧倒的に高い日本語対応力の強みを生かし、業務アプリケーションの開発を中心に発展してきました。それ以前から一部ミドルウェア等もありましたが、圧倒的に業務アプリケーションの比率が高く、現在も主流になっています。

  しかし最近は、業務アプリケーション以外の分野でも大きな変化が出てきています。それは組込み系ソフトの分野です。中国では業務アプリ系のソフト会社に比べ、組込み系のソフト会社は、まだま少ないというのが実態です。とはいえ、なかには高いスキルを持った企業もあります。この中国ソフトウェア会社(A社)はハードウェアに関する豊富な知識も有しているため、OSに近い領域のソフトウェアの開発にも対応できます。

◆ある日本企業のケース

  ここで、ある日本企業(顧客)の成功事例をご紹介します。この日本企業はA社に対して、組込みソフトのみならず、その組込みソフトを搭載するボードの回路設計、PWB設計、ボードの試作、アルゴリズム研究・開発まで一括で開発委託しました。言わば、組込みシステムの一括開発委託です。

  さらに開発当初からA社に対して、試作結果が良好だった場合は中国現地での部品調達から生産まで委託する旨を事前にアナウンスし、設計段階から中国現地で調達可能な部品を採用するように指示しました。従来はハードは日本で開発し、組込みソフトのみを中国に開発委託する方式が一般的でした。しかしこの開発方式では開発効率が悪く、オフショア開発のメリットを出しづらいという欠点がありました。なぜなら、組込みシステムの場合、開発途上でハードの開発者とソフトの開発者が密に連携し、ときにはさまざまな試行錯誤をしながら開発を進めていく必要があるからです。つまりハードとソフトを別々の拠点で開発するという従来方式では、効率的な開発が難しかったのです。

◆組み込み系も拡大の見込み

  しかしこれらの問題は、ハードとソフトの双方を一括で中国に委託することによって解決できます。しかも、当初から中国現地での生産も想定し、設計段階から中国現地で調達できる部品を採用することにより、試作完了後の生産にスムースに移行できるというメリットもあります。この事例では、開発途上においていくつかの問題にぶつかりましたが、これらをひとつひとつ解決し、結果的には大成功を収めました。非常に戦略的な中国オフショア開発事例であったと思います。

  一般的には、中国オフショア開発は業務アプリケーションのみだと思われがちですが、実はそうではありません。組込み系ソフトの中国オフショア開発も、ここまでのレベルに達しています。現在、日本では組込み系ソフトウェア技術者の人材不足が深刻です。数万人不足しているとも言われています。このような事業環境のなか、技術流出やセキュリティー上の問題、開発環境の問題などを勘案すれば、さまざまな意見、考え方があり得るとは思いますが、私は上記の成功事例を目の当たりにして、今後は組込み系でも中国オフショア開発は拡大していくのではないかと感じています。(執筆者:末富昌幸)

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