「新しい公益法人になったほうがいいのだろうか」「非課税ならNPO法人より活動しやすいのでは」――。各地のNPO法人やNPO法人を目指す人たちの 間で新公益法人が注目されつつある。12月から始まる公益法人の制度改革を前に、直接の対象団体でない「外野席」からもプレーヤーが登場するかもしれな い。
公益性で財団、社団を振り分け
公益法人改革は、補助金の不適切な使い方や天下り問題などを受けて、民間の非営利活動を抜本的に見直そうというもの。2006年に「公益 法人制度改革関連3法案」が可決され、民法34条に基づく社団法人、財団法人がなくなるという110年ぶりの大改革だ。新制度では、主務官庁制を廃止し、 法人格を登記だけで取得出来るようにする一方で、公益認定を民間有識者に委ねることなどがポイントだ。
全国約2万5千の社団法人と財団法人が公益認定の基準でふるいにかけられて、非課税の「公益社団法人、公益財団法人」(新公益法人)と 原則課税の「一般社団法人、一般財団法人」に分かれる。その基準は、(1)公益目的の事業が支出の半分以上か(2)同一親族が理事または監事の3分の1以 下か(3)遊休財産額が一定額を超えないか――などで、公益性が高いと認定されれば新公益法人となる。
2つ以上の都道府県に活動地域がまたがる7000弱の団体は内閣府が定めた基準で認定される。活動地域が都道府県内に限られている1万 8千強の団体は、それぞれの自治体が定める基準を使うが、ほとんどが国基準をそのまま踏襲しそうだ。だが、東京都や神奈川、千葉県は独自基準を作ろうとし ている。
既存の財団、社団は12月の新制度施行後5年間は従来と同様の活動が出来る「特例民法法人」として存続し、5年の間に一般社団・一般財 団か公益社団・公益財団のどちらかを選んで移行申請をすることになる。いまのところ、各種の業界団体などは従来の活動をそのまま継続出来ることから、一般 社団になる方向だ。
NPO法人にも非課税の道
今回の改革では、同じ公益法人ではあるがNPO法に基づくNPO法人は対象外となっている。ところが、NPO法人にも社団法人への衣替え という選択肢が生まれた。まず、簡単に設立できる一般社団法人として別動隊を登場させて、非課税の公益社団法人に移行できた段階で、NPO法人の活動を移 管させるという方法だ。
NPO法人にとっては課税・非課税は重要な問題である。
現状でも、認定NPO法人という税の優遇制度はある。NPO法人に寄付をした人が税控除され、当該NPO法人も所得の20%まで非課税と なるものだが、「法人収入の2割以上が寄付による」など条件が厳しい。このため全国で約3万5千あるNPO法人の中で、認定NPO法人はわずか89にとど まっている。
新公益法人に対する関心が高いのは、介護保険事業に取り組んで規模を拡大させてきた介護系NPO法人。支払う税金が増えてきたからだ。 現場からの疑問の声も、以前から出ていたが、ここへ来て一段と高まっている。それは、介護保険の訪問介護やデイサービスなど在宅サービスは、あらゆる法人 が参入して同種のサービスを手掛けているのに、社会福祉法人だけが非課税だからだ。同じような要介護者に、同じようなサービスを提供しているにもかかわら ず得られる収入に大きな違いがある。
「もし、税金を払わないでいいならば、新しいサービス拠点を増やしたり、スタッフの給与に回せるはず。優秀なスタッフを採用でき、組織に厚みが加わるのに」。そんな思いが募ってくるのは当然だろう。
東京都西東京市で高齢者の支援活動を続けているNPO法人「サポートハウス年輪」も、介護保険事業などで支払う税金が増えてきたため公益法人改革への関心を高めている。NPO法人から公益社団法人への衣替えも視野に入れて検討に入った。
新公益法人の理念はNPO法人と重なる
NPO法人が新公益法人に移ることには、法律の考え方からすると極めて自然な成り行きである。それは、新しく出来た公益法人認定法とNPO法(特定非営利活動促進法)を見比べると一目瞭然(りょうぜん)だ。
公益法人認定法は、その第1条で新公益法人の設立について「民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業が重要になっている」と強調し、第2条で公益目的の事業内容を「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」と定めている。
これは、NPO法によるNPO法人の規定と重なる。既存のNPO法人が新公益法人に衣替えしてもその理念は継承されるとみていいだろう。
腰が重いNPO法人
だが、現実には公益法人へと正式に名乗りを上げた介護系NPO法人はまだ聞かない。その理由は2つありそうだ。
まず1つは、介護保険事業が団体の公益事業であると認められて、その収支の差が非課税となるかについて明確な答えが出ていないためであ る。現状では、介護保険事業は公益の本来事業として位置付けられてはいるものの、税務当局は課税対象としている。それが、公益社団法人への公益認定の基準 適用でどのように判断されるか。仮に公益事業とされても非課税にはならないのでは、という疑念があるのだ。
もう1つは、NPOという「光り輝く」名称を捨て、天下りや補助金に甘えている一部の公益法人と同じグループに入ることへの「嫌悪感」 が強いことだ。不祥事を起こしてきたNPO法人もあるが、多くのNPO法人は「NPO」への執着がある。なかでもNPO法の制定に奮闘してきたリーダーた ちに、気持ちの切り替えは容易ではない。
とはいえ、理念が同じ法律の下にありながら、現場の組織が全く違う名称なのはおかしなことだ。早急に一本化へ向けた議論が始められるべきだろう。
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