2008-08-25

今こそ介護労働者の待遇改善を

:::引用:::
 介護労働者の低賃金・ハードな労働条件がようやく政治課題化してきました。介護労働者が十分な報酬を得られない中、介護職は敬遠され、不足しています。 「保険あってサービスなし」になりかねません。外国人労働者を入れるとしても、大量に増やせるわけではないし、日本人であろうが外国人であろうが使い捨て ではいけません。

 「介護は女性の仕事だから」と、低賃金で(介護保険以前は無報酬で評価されていた場合が多かった)こき使ってきた付けが回って来ているのです。

 一方、利用者サイドから見ても、家族の「担い手」が少なくなる一方で、サービス提供が制限され、家族への負担が大きくなっています。例えば、介護を理由 に離職・転職する人は、2006年のサービス給付を制限する改正介護保険法施行を契機に激増しています。もう、これ以上待っていては、介護問題から社会が 崩壊しかねない。そういう状況になっています。

参照:
介護保険法「改正」後に、激増した「介護離職・転職」

■光も見える「またとない好機」
 しかし危機的な状況の中で、光明も見えてきました。すなわち、「介護労働者の労働条件を抜本的に改善し、介護にもっと世間の光を当てるチャンス」が政治的に到来しているのです。

 まず、2007年4月の都知事選挙では、浅野史郎候補が、介護報酬の独自上乗せをマニフェストに掲げました。さらに、7月の参院選で、介護報酬改善をマニフェストに掲げた民主党が参院選で勝ちました。

 そして、2008年の通常国会で「介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」(介護人材確保法)が「精神規定」ばかりとはい え、成立しました。そして、2009年4月には介護報酬が3年ごとの改定の時期を迎えますが、それへ向けての厚生労働省の審議会での議論が今年の 10-11月には、山場を迎えます。

 さらに今、きちんと国民が厚生労働省に対して介護問題について声を上げていくことは、1年後には与党になっている可能性も高い民主党への叱咤激励にもな ります。仮に自民党政権が介護報酬引き上げを拒み、現在の努力が報われなくても、将来、民主党政権で流した汗が活きてくる可能性があるのです。

■正職員中心の労組も署名に立ち上がる!
 そうした中、私が所属する自治労でも、介護労働者の待遇改善を求める署名への協力を呼びかけています。先日、組合から署名用紙が回ってきたのを見て、少し感動しました。

 介護保険は、そもそもは、市町村が「保険者」であり、被保険者たる住民によいサービスを確保するのは市町村の義務です。「たまたま、サービスを民間に代 行させている」だけで最終責任は市町村にあります。介護労働者も公務員ではなくても公務労働者ですから、その問題に自治労が取り組むのは当然です。

 ただし、広島県入庁(=組合加入)9年目になる私が経験した限りでは、「全労働組合員の問題として、介護労働者の問題が認識されるような機会」はありま せんでした。数年前、地方組織で役員を務めていた私でさえ、地域における介護労働者の労組立ち上げ記念イベントに招かれたくらいです。

 都道府県や市町村の行政で福祉を担当する組合員(正規職員)でも、「自分たちのことで精一杯」という実態はあります。さらに、組合自体も役員に、「嫁や娘として介護を主に担当させられてきた女性」が、組合員の割合に比して少ない。

 このようになかなか組合としては取り組む機会がない中、私は個人的には、女性の政治参画を進める運動などに力を入れてきました。

 もちろん、自民党や官僚(「男性のえらい人」)による支配が続く限り、制度改善を勝ち取るのは難しい、ということはあります。国の官僚の本音は「介護に税金を使わせない」ことだということは仕事上、散々思い知らされています。

参照:
「介護保険に税金投入しないぞ」が国の本音だった

 ただ、民主党や労働組合は今後、「せっかく政権交代したが、やはり、労働組合・民主党は男性の正社員の既得権益維持しか頭にない」と思われないように必 死で取り組みをすべきです。自治労も昨年の参院選では非正規労働者出身の相原久美子さんを組織内議員として当選させ、本部の書記長に女性を登用していま す。これらを、女性が多い介護労働者の待遇改善につなげたいものです。

■社会システム見直しとセットで効果的になる訴え
 組合員であれ一般人であれ、いつも多くの方が問題にするのは「財源」です。そこで、「介護報酬の引き上げにはなかなかならないと思うが」という組合員と、役員として署名をお願いする私の会話(想定問答)を紹介します。

組合員:おお。介護の現場は大変だな。人がなかなか集まらないそうだなあ。しかし、介護報酬を引き上げる、という話にはならないだろう。高齢化で介護の需要が増えるから。費用にも限界が出てくるだろう。

私:うーん。たとえば、道路やハコモノに今まで回していたお金を介護に回すとかすればよい。私は昨年ノルウェーに行きましたが、道路は日本ほど立派ではな い反面、きちんと介護の労働者を食える賃金の公務員で雇っていましたよ。地域の中でお金がぐるぐる回るようにしているのです。政権が(組合が応援する)野 党に交代したらそういうことをしないといけない。

組合員:ほう。

私:それから日本でも、人々に能力に応じた負担をしていただければ、財源は確保できます。たとえば、お年寄りでも「現役のとき高収入を取っていた人」に老 後まで高い年金を保証するのを見直すとか。お金がある人からは税金をきちんといただくとか。そのかわり、誰でも安心してサービスが受けられるようにすれば よいと思いますよ。老後を安心して暮らせることが大事なのですから。

組合員:そりゃそうだ。年金が高いよりは、万が一のときサービスを安心して受けられるほうがいい。

 このようにお願いすると、いつもは署名にあまりご協力いただけないような方でもしていただけるのではないでしょうか。緊急性をPRしつつ、社会システム全体のあり方を変えることが大事、ということを訴えたほうがよいと思います。
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