2008-08-28

ベトナム:労働者の工場敬遠、ますます深刻に

:::引用:::
 工業団地や輸出加工区を中心に、ホーチミン市の企業では全体として労働者が不足している。

■条件下げ、大盤振る舞いも効果なし
 「現時点で各社は1万人以上を必要としているが、私たちが応えられるのはこの30~40%に過ぎない」輸出加工区・工業団地管理委員会 (HEPZA)の職業紹介センターNguyen Thanh Tung所長はこう話す。供給が足りないだけでなく、輸出加工区・工業団地内で働く25万人の労働者は、毎年3~4%の割合で減少しているという。

 7月はじめ、Tan Thuan輸出加工区(7区)、Linh Trung輸出加工区(Thu Duc区)、Tan Binh工業団地など各地で、労働者を大量に新規募集する横断幕が多数掲げられた。「ガソリン・技術・勤続・住宅手当」「能力に応じ毎月昇進、スポーツク ラブ、慰安旅行有り」横断幕にはこんな文字が躍る。

 しかしこんな大盤振る舞いも成果は芳しくないようだ。経験のある労働者は現在、工場以外の職や全く新しい別の道を歩むことを考えており、企業は 労働者不足に頭を悩ますばかりだ。Linh Trung輸出加工区内のある企業の警備員によると、募集広告はすでに1カ月以上も出されているが、問い合わせに訪れたのは数十人に過ぎない。Tan Thuan輸出加工区の職業紹介センターでも募集告知を見に来ているのは7~8人だった。

 Tan Tao工業団地内の縫製会社の人事部長H氏は、「人材探しはとても難しい」と話す。労働者には現在、地域的にも業種的にも多様な選択肢があり、各社の人事 部も座して待たず、すすんで地方に赴き説明会などを開催している。H氏も昨年末からこれまでに、Phu Yen省やQuang Ngai省など中部、Ben Tre省などメコンデルタ地域を幾度となく訪れている。

 以前と比べ、募集条件も大きく引き下げられている。Tan Thuan輸出加工区のある人事部担当者Hue氏によると、募集年齢は以前は18~25歳だったが、現在は30歳にまで広げ、最終学歴も高卒から中卒に下げ、場合により小卒でも受け入れている。

■厳しい労働条件で起こるスト
 我々の調査によると、募集広告の多くは縫製、履物メーカーに集中している。輸出品の生産企業などでは年間残業300時間を適用できるが、実際に出荷時期になると労働者らは1日平均10~13時間の勤務を強いられる。

 6月中旬頃、Linh Trung 1輸出加工区のKollan社でストライキが発生したが、これは過度の残業に端を発したものだ。ある工員によると、残業は月間で80時間を超えていた。

 今年はじめから労働者の収入は上昇傾向にあるが、彼らの困難は変わらない。「一部では待遇を良くしているが、定着策を持たない企業は多い。労働者の生活の質は落ちており、その結果、この数年工業団地・輸出加工区に人が集まらなくなった」とTung所長は話している。

■技術無しの労働者増に懸念
 ホーチミン市科学技術局の報告によると、工業分野の市内企業のほとんどは技術水準が並みかそれ以下だ(現代的な技術を持つ:10%、並 み:32%、遅れた・非常に遅れた技術:52%)。現代的な技術を導入している企業は、繊維分野では212社中21社、履物では40社中4社に過ぎない。

 市人民委員会に提出された、輸出加工区・工業団地内の経済構造改革促進提案によると、HEPZA内の企業の多くが中小で、少ない資本で多数の労 働者を雇用している。HEPZA代表のVu Van Hoa氏によると、市の産業構造はそのほとんどが加工で、完成品を生産するものではない。電子部品大手でも、工程の一部を担当しているにすぎない。

 企業が技術革新を進めなければ、労働者から自主性は失われ、技術向上に向け学ぼうとする意識が小さくなる。そうしていれば労働者の給料は勤続年 数に沿ってわずかに上がるだけで、将来的に技術を持たない労働者層が形成され、ある年齢に達すれば彼らはお役御免となる。「職業訓練校と企業の連携がない ため、需要拡大の一方で供給は縮小している」とTung氏は話す。この問題を解決するため、労働傷病兵社会福祉省は企業が労働者を自主育成するに適した制 度をつくり、同時に職業訓練の社会化をはかるべきだとしている。

 Hoa氏によると、HEPZAは縫製や履物企業の移転計画を立てており、2008年にはLe Minh Xuan工業団地内の企業で実施する。このテストケースをもとに他の工業団地でも行う計画で、「生き残りのため企業は技術革新を優先しなければならない。 HEPZAは技術革新をする企業に融資するなど支援していく。高い技術を持つ企業だけが市に存在できる」と話している。

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