2008-08-22

生産構造変化で急伸 中国が最大輸出先

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 財務省が二十一日発表した七月の貿易統計速報で、中国が米国を抜いて最大の輸出相手国となり、二カ月ぶりの輸出の増加をけん引した。しかし、中国 経済の行方は不透明感が強く、北京五輪後に急ブレーキがかかる可能性もあるだけに、市場では「輸出の減速傾向は変わらない」との見方が多い。 (吉田通 夫)

 中国向け輸出は前年同月比16・8%増、アジア全体でも12・7%のプラスだった。先月は伸び率が一けた台に急減し、輸出全体が四年七カ月ぶりに 前年同月水準を割り込んで国内景気の後退を象徴したが、今月は一転して好調な伸び率。二カ月連続で減少率が二けたにのぼった米国向けの低迷を補った。

 日本企業は人件費の安い中国などに現地法人を設立し、部品を輸出して製品を組み立て、欧米に輸出するという事業構造に変わってきたため、数年前か ら欧米向けが減少し、アジア向けが増える傾向が続いてきた。さらに、経済成長でアジア自身の製品購買力が高まったこともあり、輸出は高い伸びを続けてき た。

 しかし、今後の動向を不安視する声は強い。すでに、中国では四川大地震や物価高騰の影響で成長率の伸びが二・四半期連続で鈍化するなど変調の兆し がある。それに加えて「五輪という心理的な節目が終わると、不動産市況や電気製品の需要が落ち込むなどして急に冷え込む可能性がある」(第一生命経済研究 所の熊野英生主席エコノミスト)との懸念もある。

 また、大消費圏である欧米の経済は後退色を強めており、停滞が長引けば、中国やアジアから欧米に向けた輸出も減り、最終的に日本からアジアに向けた輸出の減少にもつながる。すでに、中国の輸出は鈍化を始めており、予断を許さない状況だ。

 七月の貿易統計速報では、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は辛うじて黒字を確保したものの、資源価格の高騰を背景に輸入額が増え、黒字幅は大きく落ち込んだ。

 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎主任研究員は「輸出が再び減速に向かえば、八月以降の貿易収支が赤字になる可能性がある」と分析した。


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