2008-08-23

SEが持っていたい10のパワー―― でも最後は人間力 (1/2)

:::引用:::
屈指のSEの正体
SEが持っていたい10のパワー―― でも最後は人間力
IT投資、資金不足を口実にする前に知恵を出そう
コンサルタントは恨まれて一人前――現場密着し、執念持て
「こいつじゃ無理だ」と決めつけない――社内IT人材の育成術
IT導入「ユーザー主導」の正しい姿とは――ベンダーの「面従腹背」
そもそも何かがおかしい――役員が社内で長時間PC麻雀
自ら動き出さない関連部門には「非協力税」を
「居眠り社長」が連絡会議で聞きたかったこと
コンサルタントにはまず「疑いの目」を
「速度は守ってるよ!」「だけど逆走ですよ」――プロジェクトが暴走する原因
 SEには、ベンダーから派遣されるSEと、ユーザーにおける情報システム部門のSEとがあるが、基本的に同じとみなして以下議論を進めよう。
 まず、周辺に見られるダメSEの典型を概観することから始めよう。
 ERPを導入した中堅の電子機器メーカーA社から筆者は、導入後逆に業務の収拾がつかないほど混乱しているのでちょっと見て欲しいと頼まれた。筆者が、A社の情報システム部、及び経理部など業務部門の担当者にヒヤリングした結果、業務の実態と混乱の原因が分かった。
 ERP導入時、ベンダーB社から社内屈指のSEだという前触れのCがリーダーとなり、SE部隊3名が乗り込んできた。Cは、たちまちA社の情報システム部長Dの心をつかんだ。CリーダーがD部長に対して、「A社でのERPを成功させ、導入手順をノウハウ化して電子機器メーカーのモデルとして商品化し、市場に出したい。A社にもノウハウ料が入る」と提案したという。Cリーダーは、確かに切れ者だったようだ。A社の幹部には、よく取り入った。しかし考え方や態度が尊大で、A社の業務部門とあまり接触せず、主に情報システム部とやり取りをし、基本的に終始ERPをA社に押し付ける姿勢だった。実は、D部長ももともと尊大で、業務部門を小バカにする傾向にあった。それはよくあることだが、情報システム部が業務部門から、常日頃「単なるコンピュータ屋だ、業務部門の下請けとしてコンピュータを稼働させていればいい」というふうに蔑視されていた裏返しでもあった。
 結局、A社の実態を無視したERPとなり、Cが提案した商品化も実現しなかった。
 CやDのようなタイプは珍しくない。彼らの部下も、彼らに影響される。彼らの大体の傾向は、自信過剰である、物事をマイペースで進める、ユーザーを「戦略や思想がない」と一段下に見る、ユーザーに対する好みが偏る、知らないことがあっても特に技術的なことについてはなかなか知らないとは言わない、技術重点指向でビジネスを知ろうとしないなどの特徴を持つ。技術的に優秀と言われるSEほど、このいずれかの傾向を持ちやすい。もちろん、そうでない本当の意味での優秀なSEはいる。完全無欠なSEは存在しないが…

 昨今のように景気の先行きが怪しくなると、IT投資も削減傾向になる。もともとSE業務がオフショアや外国人に流れる傾向にあり、その上投資も抑制されると、力のない日本人SEや顧客から敬遠されるSEは淘汰される。SEが不足だと言う話は、上級SEやプロジェクトマネジャーのリーダークラスについてである。
 そもそもSEが生き残るためには、そしてIT導入に貢献するためには、どうあるべきか。筆者の持論は、SEは5つのファンダメンタル・パワーと、5つのプロフェッショナル・パワーを持てということである(筆者著「迫り来る受難時代を 勝ち抜くSEの条件」洋泉社)。
 前者は、(1)フィロソフィーを持て(2)本質を見極める力を養え(3)創造的思考力を養え(4)「人間力」がSEを本物にする(5)ビジネスマインドを鍛えよ、である。
 そして後者は、(1)基礎的実務能力(2)受注獲得能力(3)コンサルティング力(4)設計力(5)システム責任能力、である。
 しかし、それらを備えるSEは完全無欠のSEであり、滅多に存在しまい。10のパワーを持てと勧める理由は、SE各人がこれに照らし合わせて自分に何が欠けているか、欠けている中で、目下の業務を合わせ考えたときにどの部分を当面補う必要があるか、をチェックするための項目として使えという意味である。そうしているうちに、あるべきSEの姿にだんだん近づいていく。
さて、完全無欠なSEとしてIT導入に関わることがおよそ無理なら、最低限備えるべき力は何か。筆者の経験や上記の例から言えると、それは「人間力」である。
 多くのユーザーが異口同音に、「SEは、やれ技術力だ、やれ政治力だ、やれ何だかんだと言っても、結局大切なのは人間性なんだ」と口にすることが、それを証明している。
 なぜ「人間力」が重要か。人をひきつける魅力を持つSE、すなわち誠意と謙虚さを忘れず、高い意欲と熱い情熱が脈打つSEは、プロジェクトメンバーやユーザーの信頼も得られるし、考え方がしっかりしていてシステム思考も経営戦略的思考も備え、そして多くのことを学んで身に着けようと、常に努力をするからだ。では、「人間力」を身に着けるにはどうしたらよいか。これはその人の総合力であるから、理屈ではどうしようもない。ただ言えることは、「聞き上手になれ」ということである。相手の主張を、特にユーザーの言い分を、徹底して聞きに回ることである。
 先の例に挙げた、A社のD情報システム部長にしても、ベンダーB社のCリーダーにしても、「徹底して聞き役」に回ることで、ユーザーの信頼を得ることができ、やがて自分自身も角が取れて謙虚になり誠意を持つようになっていく。高い意欲・熱い情熱・高度な技術はもともと備えているのだから。
 要するに、徹底して「聞き上手」になることを、「人間力」体得の入り口にするしかない。そしてSEには、若い頃から「人間力」の重要性を説き、教育をしなければならない。教育に与かる上司が「人間力」があり、それを知っていなければならないが。
 もともと高い意欲も情熱も技術もないSE、あるいは「聞き役」に徹することができないSEは、一生失職の恐怖におののきながらSEの末席を汚していくしか道はない。
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