2008-08-20

異文化間 対話力育てる 海外の日本語教育

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グラフ

写真韓国・東莱(トンネ)小5年の日本語の授業=伊佐写す

 世界の日本語教師や研究者が集う「日本語教育国際研究大会」が7月、韓国・釜山外国語大学で開かれた。7回目の今年は24カ国・地域から発表があった。 見えてきたのは、海外の日本語教育が「日本語を教える」ことから、「日本語を通じて」異文化間のコミュニケーション力を育むことへと大きく軸足を移してい る姿だ。(伊佐恭子)

 世界一日本語学習者が多い韓国では、その8割が高校生以下の子どもたちだ。日本の植民地時代に「国語」として行われた日本語教育は、解放後、一時 タブーとされたが、65年の日韓国交正常化を期に再開。73年に高校で、01年から中学校でも第2外国語の一つに加えられた。現在、小学校でも校長の裁量 で、日本語を教えることができる。

 日本語教育の目標などを定めた国の教育課程が、中学校で10年、高校で12年から改訂される。朴且煥・高明情報産業高校教諭(ソウル)によると、 ポイントの一つは「文化教育の強化」という。高校では日本人の日常生活や文化を理解するだけでなく、「韓日文化交流の必要性を理解し、積極的に交流しよう とする態度を持つ」と明記した。

 朴教諭は「独島(竹島)や歴史認識問題はあるが、この数年で社会状況は変わってきた。これからは日本、中国との協力体制が大切で、東アジア共同体の一員として必要な能力を育てようという理念を打ち出した」と話す。

 韓国とは反対に、中国では小中高校の学習者はピーク時の30万人近くから3分の1に減少したと推定されている。

 その理由について、遼寧省基礎教育教研培訓中心の曾麗雲副教授は「大学受験に英語が必須であること、小学校から英語の授業が導入されたことやコンピューターの普及で英語使用の機会が増えたため」とみる。

 一方で、天津外国語大の修剛教授によると、580以上の大学に日本語学科があり、ここ10年で3倍近くに増えた。教育内容も多様化。「日本語そのものを学ぶことから、日本語を通じて何かを学ぶ方向へ変わろうとしている」(修教授)という。

 だが北京日本学研究中心の徐一平教授は「学習者68万人といっても、13億の人口比からいえばごくわずか。ほとんどの若者は日本のことを知らない。もっとすそ野を広げることが必要だ」と話す。

 オーストラリアの人口あたりの学習者数は55人に1人で、中国を抜いて世界2位。この学習者の96%が小中高校生だ。なぜこれほど日本語教育に積極的なのか。

 ニューサウスウェールズ大学のトムソン木下千尋准教授は、オーストラリア教育審議会による99年アデレード宣言の理念が根底にあるという。宣言に は「すべての生徒が、文化言語の多様性の価値を理解認識し、オーストラリア社会や国際社会のこのような多様性に貢献し、そこから利益を受けられるだけの知 識と技能と分別を持つこと」とある。トムソン准教授は「英語とかけ離れた日本語を教える過程を通して、自国の言語や文化を振り返らせることもできる」と説 明する。

 今大会のテーマは「日本語教育学の広域ネットワーク構築に向けて」。李明姫・大韓日語日文学会会長は「これまでは日本と韓国、日本と中国という日 本を中心とする2国間の関係だったが、これからは海外の教育者・学習者が相互に連携し、『世界の日本語教育』という視点で考える時代になった」と話す。


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