2008-03-10

NEUSOFT Japan、「中国本社への窓口ではなく、“日本企業”になる」

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中国のITベンダーが、日本で存在感を高めている。特にグローバル化を進める企業にとっては無視できない存在になってきた。日中間の経済的な結びつきが強くなり、それを支える情報システムの面でも、日本企業が中国ベンダーの支援を受ける機会が増えてきたのである。

 日本市場に切り込もうとしている中国ベンダーの業態も様々だ。

 基幹系システムの分野では、SI最大手のNEUSOFTグループ(東軟集団有限公司)やERPパッケージ最大手の用友ソフト(UFIDA、用友軟件股 フェン有限公司)が、日本市場での体制強化や業務提携を活発化。ネット系では、百度公司が2008年1月に日本向け検索サイト「Baidu.jp」を開設 した。BtoBのECサイトを手がけるアリババグループ(阿里巴巴集団)もソフトバンクと提携して、日本市場に力を入れ始めている。

 通信やセキュリティの分野でも動きが活発になってきた。通信最大手の中国網通グループは2007年4月に日本法人を設立し、日中間の通信事業を開始。キングソフト(金山軟件有限公司)のように、ウイルス対策ソフトを日本企業向けに提供するベンダーも登場している。

 本特集ではこれらの企業の中から、NEUSOFT Japan、キングソフト、用友ソフトジャパン、アリババグループ、CSSTの5社のキーパーソンにインタビュー。日本市場に切り込もうとしている各社の 狙いや戦略を追った。まず今回は、NEUSOFT Japan 代表取締役社長の簡 国棟(かん こくとう)氏に、ビジネスの現状や日本市場での戦略を語ってもらった。

日本市場に本腰入れる中国最大のインテグレータNEUSOFT

 NEUSOFTグループは、オフショア開発やアウトソーシングなど事業を幅広く手がけ、1万3000人の従業員を抱える。その日本法人である NEUSOFT Japanは、これまで日本企業と中国本社を橋渡しする役目を担ってきた。オフショア開発やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)への関心が高 まり、日中のビジネスが接近するなかで、NEUSOFT Japanが描く日本市場戦略を簡社長に聞いた。

NEUSOFTはどのような事業を手がけているのか。


 大きく5つの柱がある。まず、1991年のNEUSOFT設立から現在まで(1)組み込み機器向けのソフトウエア開発に取り組んできた。このほか の事業としては、(2)企業情報システム向けのソフトウエア開発、(3)ERPパッケージを使ったシステム開発、(4)ソフトウエアの評価テスト、があ る。さらに2007年から、ユーザー企業から業務そのものの運用を受託する(5)BPOに力を入れ始めている。

 BPOについては、データ入力やコールセンター、情報システムの運用などの業務を手がけている。中国・大連にBPOセンターを置き、日本企業の業 務も請け負っている。コールセンター担当の従業員は200人、バックオフィス業務に当たっているのは50人程度だ。ぜひ一度、見学してほしい。関西弁を話 す従業員もいて、オフィスの様子はまるで日本企業のようだ。

5つの事業のうち、収益が最も大きいのは何か。

 やはり組み込み機器向けのソフトウエア開発だ。長年の実績があるため、引き合いも多い。中国本社では開発者3000人の体制を敷いている。これだけの規模で組み込み機器向け開発の要員を確保している企業は、中国には当社以外ない。

 ERPパッケージを使ったシステム開発の案件も増えている。特にNEUSOFTの株主である独SAPの製品を積極的に採用している。SAP製品の技術者は400人抱えており、これも中国では最大規模だ。

 日本企業から請け負った、SAP製品によるシステム開発の案件も多い。日本で稼働するシステムの開発もあれば、日本企業の中国現地法人が利用するシステムの開発もある。

あちこちに井戸を掘っても水が出るとは限らない

中国では人件費が高騰し、コストが安いというメリットは薄れている。実態はどうなのか。

 確かに人件費は高騰している。当社はこれを2~3年前から大きな課題として認識し、ユーザー企業がメリットを享受できるよう、生産性の向上と付加価値の提供という2つのテーマに取り組んでいる。

生産性の向上に向けて、具体的にはどんな施策を進めているか。

 ユーザー企業と長期的なパートナシップを確立することだ。ユーザー企業は、当社にとって知識の倉庫のようなもの。ユーザー企業にじっと腰を据え、長い時 間をかけてノウハウを吸収することで、当社の開発生産性を高めることができる。個々のユーザー企業を担当する責任者も極力変えず、良い関係を構築すること に努めてきた。

 ユーザー企業と一緒に成長していくことが重要だ。初めて手がけるプロジェクトと、長年のパートナシップとノウハウをベースにしたプロジェクトでは、得られる成果が大きく異なると考えている。

 日本企業はコスト・メリットを求めて、料金の安いベンダーに仕事を依頼する傾向がある。しかし、水を求めて闇雲に井戸を掘っても、水が出るとは限らない。砂漠に近い場所では、特にそうだ。それよりも今ある井戸を大切にしたほうがよい。


日中の“橋渡し役”から脱皮する

今後に向けた戦略は。

 現在はシステムの詳細設計や開発、テストを主に請け負っているが、企業情報システム開発のもっと上流工程を手がけるようにしたい、と考えている。ほかの中国ベンダーにはない付加価値になると考えているからだ。

 日本市場では、単なる“NEUSOFTの子会社”“中国本社への窓口”といった位置付けから脱皮し、NEUSOFT Japanという一つのITベンダーとして認知されるようにしたい。つまり、日本企業としてビジネスを進められるようにしたいと考えている。

 NEUSOFT Japanは2008年度、前年度比50%増収の見込みだ。2007年10月には、東芝のソフトウエア開発を支援するための新オフィスを、東京都府中市に設立した。この成長を続けながら、日本におけるITベンダーとしての存在感を高めていきたい。


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