2008-03-19

チベット暴動 噴き出た中国の民族問題

:::引用:::
 中国チベット自治区の区都ラサで大規模な暴動が発生し、多数の死傷者が出ている。一九八九年のラサ暴動を上回る激しさとも伝えられる。

  ラサではチベット民族が人口の九割近くを占め、漢民族は一割程度だ。現地からの情報が限られているため詳しいことが分からないが、中国国旗を踏みつける光 景などから中国政府の統治に対する抗議行動との見方がある。中国当局はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ十四世による陰謀と批判し、ダライ・ラマ側は 反論した。

 五一年の中国人民解放軍チベット進駐で中国政府の統治が始まった。五九年の動乱でダライ・ラマ十四世はインドに逃れ、亡命政 府を樹立した。八〇年代にラサで独立を求めるデモが頻発し、八九年の暴動では戒厳令が敷かれた。近年は経済支援による融和政策がとられ、二〇〇六年には自 治区と青海省を結ぶ青蔵鉄道が開業している。

 だが、中国政府はダライ・ラマとの対話は断続的に行ったものの高度の自治要求には見向きも せず、政治的には強硬姿勢を貫いている。今回の暴動がチベット民族の不満の表れとすれば中国新指導部のスタートや間近に迫った北京五輪をにらみ、国際社会 の関心を集める狙いがあるのかもしれない。

 中国は国内に多くの民族問題を抱える。中国の人権や宗教の問題に対する国際社会の視線は北京五輪を控えて厳しくなっている。ライス米国務長官は今回の暴動を受け、中国政府に対して過度のデモ鎮圧を抑制し、拘束したデモ参加者を解放するよう求めた。

 中国政府の抑制的対処が望まれる。対応を誤れば国際的な信頼は低下しよう。ダライ・ラマとの対話などで問題抜本解決の道を模索すべきだ。

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