現在のように変化が激しく、「何を成すべきか」が不明確な経営環境では、変化対応する力があり、成果を出せる人材が必要とされます。
一方、「いい人がいない」「人が足りない」と嘆く企業は後を絶ちません。特にIT業界の人材不足は深刻であり、高度なプロジェクトを率いるプロジェクト管理者の数は、日本全体で見ても数万人不足しているという指摘さえあります。
年間1500万円で未経験者6人
「それほど人材が足りないなら、採用すればいいではないか」というご意見もありますが、現在は16年ぶりの空前の売り手市場であり、良い人材は簡 単には見つかりません。ある中堅SIerでは採用コストを年間1500万円かけましたが、採用できたのは未経験者6人だった、という事例もあるほどです。 採用がいかに困難であるか、お分かりいただけると思います。
それならば自社で人材を育成しなければならない、ということで現在は社員の育成に力を入れている企業が増加しています。
そのような会社にとって「人材育成」は多くの企業にとって、最も重要な経営課題のひとつであることは疑う余地がないでしょう。「会社は人なり」という名言通り、「人をつくることは会社の未来をつくること」です。
元3M会長兼CEOであったジェームス・マクナニー氏は「リーダーの育成」に関して次のように述べています。
「生産性や顧客満足度、ブランド価値の向上などいずれも重要だが、最も必要な仕事は社内で優秀なリーダーを育てることだ」
このような現状を踏まえ、本連載では「IT業界において、良い人材を育成するには、企業として何に取り組まなくてはならないか」に焦点を当て、話を進めます。
良い人材とは何か
さて、最初に質問です。
良い人材とはどのような人でしょうか――。
少し考えてみてください。
当然、答えは一つではなく、仕事や企業のカルチャーによってもさまざまな人材像があります。ですが、どこの企業も求めている人材は結局のところ、「仕事で成果をきちんと残せる人材」ということとなります。
それでは、成果を出せる人は、どのような人材なのでしょうか。頭のいい人、コミュニケーション力のある人、それとも知識の豊富な人なのでしょうか。
こちらも、当然100人に聞けば100人が異なった答えを出しそうな問いかけですが、最も有名な経営学者の一人であるピーター・ドラッカー氏はその著書の中で面白いことを述べています。
「頭の良い者が、しばしば、あきれるほど成果をあげられない」
なぜこのようなことが言えるのでしょうか。これに対する一つの回答として、『アメーバ経営』で有名な京セラの創業者である稲盛和夫氏はこのようなことを言っています。
「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
ここで下記の図を見て下さい。
肝心なのはこの式が掛け算であることです。3つの要素のうちどれが欠けても思うような成果を出すことはできません。
せっかく稀な能力を持っていても、それが会社の考え方と合わずに会社を去る人、頭はいいのですが、熱意がなく、周囲の信頼を失ってしまい、結果を残すことができない人々に皆様も心当たりがあるのではないでしょうか。
人材育成の勘所は3つ
以上の話をまとめますと、企業の人材育成の勘所は次の3点と言えます。
1.会社の考え方に共感してもらえる人材を育成
2.熱意(やる気)を持った人材を育成
3.能力の高い人材を育成
さて、ここから本連載は、上の3点を踏まえたうえで、具体的な施策と事例の紹介を行いますが、大きく5つのパートに分けて、話を進めます。
(a)社員の方向性(考え方)を合わせるには
(b)社員のやる気(熱意)をアップするには
(c)能力開発の勘所とは
(d)基礎スキル・専門スキルの開発
(e)マネジメントスキルの開発
(a)においては、会社の考え方と人材の方向性を合わせるための施策と事例、(b)においては人のやる気を引き出す施策と事例について解説します。
また、(c)以降については能力開発について理解をより深めるため、能力開発の勘所について、基礎スキル・専門スキルの開発、マネジメントスキルの開発と順を追って話を進めます。
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