【北京・大谷麻由美】17日の中国全人代で発足した温家宝首相率いる新内閣は、チベット自治区での暴動で表面化した「社会不安」を克服し、いかに 「安定」を確保するかが最優先課題だ。国際社会の関心が高まる中、8月の北京五輪に影を落としており、第2期「胡錦涛-温家宝」体制はスタート時から正念 場を迎えている。
17日に国務委員に選出された孟建柱公安相は1月、全国公安庁局長会議で「国家の安全と社会の安定を侵す活動には厳しく打撃を与えるべきだ」と述 べ、「安全の確保」に断固たる措置を取る決意を語った。これは少数民族問題への対応も含まれるが、チベット族居住地域で飛び火する騒乱は、対策の難しさを 示したといえる。
胡錦涛指導部が目指す「調和社会」の道のりは険しい。国家統計局が11日に発表した2月の消費者物価指数は、前年同月比で8.7%上昇した。上昇幅は96年5月(8.9%)以来で、特に食品類は23.3%アップ。庶民の生活を直撃している。
また、昨年末の都市部の失業率は4.0%で前年比0.1ポイント低下したものの、1年間で約2000万人の就業のめどが立たず、雇用情勢は依然厳しい。指導部が10年来、取り組んできた課題は未解決のままだ。社会の底辺で不満は膨らむ。
一方、当局が号令をかけるものの、改善へのスピードが上がらない「食の安全」問題は、中国製冷凍ギョーザ中毒事件でも噴出した。治安、環境、貧富や地域の格差とともに、五輪の成功を阻む要因になりかねない。
国民の生活をまずは安定させなければ、少数民族の暴動がきっかけとなり、より広い範囲で社会不安に発展する可能性もある。
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