介護の人手不足が深刻化する中、横浜市保土ケ谷区の特別養護老人ホーム「よつば苑」(定員120人)では在留資格を持つフィリピン籍とカンボジア籍 の男女計5人が働く。パートや派遣という形だが、同市福祉事業経営者会によると、外国人が5人も働く特養は珍しい。海外から多数の介護福祉士候補者が来日 するとされる経済連携協定(EPA)が話題になる中、注目される。【池田知広】◇日本語読み書きできないネックも
「この仕事、気分的に楽なんですよね。家にいるみたいで」
ヘルパー2級の資格を持つフィリピン籍の永沢ロイダさん(40)はほほ笑み、流動食をすくったスプーンを入所者の口にあてた。来日して11年。日 本人男性と結婚し2児をもうけたが、今はシングルマザーだ。派遣社員としてよつば苑に来たが、派遣期間が過ぎても時給が200円下がるのを我慢してパート になった。「せっかく利用者さんと仲良くなったのに、さみしくなったんです」と流ちょうな日本語で話す。
よつば苑の職員は計63人。うち4人はフィリピン籍で、1人はカンボジア籍だ。入所者の女性(75)は「やさしいですよ。こまやかで、よく働いて くれる」。職員の長田栄作さん(23)は「元気でパワーがある。レクリエーションでも僕みたいに控えめに接してしまう所がない」と言う。昨年5月から本格 的に採用を始めた碓井義彦施設長(39)は「人材不足が厳しく、将来は外国の労働者に就いてもらうしかない。今から慣れておいた方がいい」と話す。
ネックもある。介護記録の読み書きができないことだ。日本に来て6年になるフィリピン籍の姫野マリアさん(48)は「一番大変だったのは利用者さんの名前を覚えること」と打ち明ける。碓井施設長も「受け入れはあと数人が限度」と言う。
65歳以上の高齢者人口が66万人に上る横浜市では、介護人材不足が深刻化。市は08年度予算案で、海外からの介護人材の就労支援に2500万円をつけ、EPAに基づき30人程度をまとめて受け入れる方針だ。
ただフィリピンとのEPAは、日本で介護福祉士として働くには複数の研修を受けたうえで4年間のうちに日本語による国家試験に合格しなければならないなど、厳しい条件を課す。碓井施設長は「わざわざ英語の通じない国に来るだろうか」と懐疑的だ。
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■ことば
◇経済連携協定(EPA)
国家間で貿易や投資の自由化ルールを定め、規制の撤廃や制度の調和などにより経済交流の強化を図る協定。日本政府は06年9月、フィリピン側の要 請を受け、2年間で看護師400人、介護福祉士600人を受け入れる協定を締結。07年8月にはインドネシアとも同人数の看護師、介護福祉士を受け入れる 協定を結んだ。
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