今回も「組込みソフト」の中国オフショア開発について、前回に引き続いてご報告したいと思います。
◆日本の「組込みソフト」技術者は9万9千人不足
ここ数年、日本では組込みソフト技術者不足が深刻化しつつあります。かなり以前から課題になっていた少子高齢化や2007年問題、さらにはソフトウェア産業が人気産業ではなくなってきていること、若手技術者の定着率が低いことなど、多くのマイナス要因が重なり、日本のソフト会社にとっては非常に苦しい事業環境になりつつあります。
経済産業省が2007年6月に公表した「2007年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書」によれば、06年の調査時点での組込みソフト技術者総数は19万3000人、不足数9万5000人(不足率49.0%)であったのに対し、07年調査時点の組込みソフト技術者総数は23万5000人、不足数9万9000人(不足率42.1%)となっています。
この数字を見て気づくことは、日本国内の組込みソフト技術者の総数は、19万3000人(06年)から23万5000人(07年)へ4万2000人(約22%)増となって不足率は改善されているものの、不足数は対前年比4000人増の9万9000人と、相変わらず技術者不足の傾向が解消される目処が立っていないことです。
昨今は日本国内の組込みソフトに関する需要が急速に拡大しており、もはや日本国内の供給だけでは対応しきれない状況になりつつあることは、この調査からもよくわかります。
ちなみに私は、最近、ある日本の業務アプリ系システム開発会社の責任者とお話をする機会がありましたが、その方もこう語っていました。「先日、古くから取引していた日本国内のパートナーさんから取引を断られてしまった。そのパートナー会社はもともと組込み系のソフト会社で、最近は本業の方が忙しくなってきたためらしい」と。
◆組込みソフトの分野でも健闘している中国勢
では、このような事業環境のなか、各企業はどのような対応をしているのでしょうか。「報告書」中にある「外部委託状況」調査によれば、日本企業の4社に1社(25.2%)は、日本国内のパートナー会社と並行して海外への開発委託も行っているという結果が出ています。さらに「海外地域別外部委託先」調査結果では第1位が中国で39.6%、第2位がインド16.5%、第3位米国12.9%となっており、中国が2位以下を大きく引き離していることがわかります。
これらの調査結果から、日本企業全体の4社に1社は、日本国内での開発リソース確保が困難であることから海外に供給を求めており、そのうち約2/5の日本企業が中国に開発委託しているということがわかります。
◆技術者不足の解決策としてのオフショア開発
私個人としても、日本企業の組込みソフト関係の方々との情報交換の機会を通じて、数年前に比べて明らかに組込みソフトの分野での中国オフショア開発ニーズが高まっていることを感じています。
しかし組込みソフトのオフショア開発を実行する上では、特有の課題、つまり(1)実機によるテスト環境を海外現地に構築しづらい(2)ハード開発との連動、密な連携が必須(3)製品技術ノウハウ流出のリスクが高い、などがネックになることが多いのではないかと思います。
たしかに単に「技術者不足だから」「コストが安いから」といって安易に海外企業へ日本国内の古くから取引のあるパートナーと同じ感覚で仕事を丸投げしてしまっては、プロジェクトの成功率は高くないと思います。しかし、これらの課題を克服しながら、プロジェクトを成功に導いた日本企業や現在トライ中の日本企業も徐々に増えていることも確かです。
私は、技術者不足が深刻化しつつある昨今、その解決策の一つとして、オフショア開発、すなわち海外パートナーとの国際分業体制構築を事業戦略のひとつとして位置づけ、本気で検討していくべき時が来ているのではないかと思います。
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