2008-01-25

過疎で縮む介護 福岡・矢部村 深刻な人手不足 村社協「居宅」「訪問」廃止 

:::引用:::
 高齢化が進むムラの介護サービスが縮小の危機にひんしている。熊本、大分両県に接する福岡県矢部村で、唯一の介護保険事業者「矢部村社会福祉協議会」が 人手不足から、在宅介護サービスを14日までで廃止した。人口約1600人で、65歳以上の高齢化率は同県内最高の42.5%。サービス再開の見通しは何 とか付いたが、若い働き手が少ないムラの高齢化を誰が支えるのか‐。

 「年明けに突然、廃止の通知が来た。デイサービス(通所介護)で風呂に入り、絵を描いたり、読み書きしたり、みんなで話をするのが唯一の楽しみだったのに…」

 息子夫婦と暮らす女性(86)は、さみしそうにつぶやいた。4戸の家が寄り添うように立つ集落。女性は歩行器が必要で、週2回の通所介護を利用していた。

 矢部村社協の栗原三鶴事務局長(68)によると、昨年1年間に待遇面の不満などで職員6人が退職。1人当たり月10‐12回もの夜勤をする事態になった。このため、同社協が運営する特別養護老人ホームに職員を集中させ、在宅介護サービスの廃止を決めた。

 このうち居宅介護支援と訪問介護は、周辺市町の民間業者に譲渡したが、41人が利用していた通所介護は「矢部村は遠く、送迎できない」などとして、引き受け手が見つからなかった。

 やむなく福岡県介護保険課に今月4日、事業廃止を申し入れたが、同課は「通所介護の廃止は介護保険で定められた利用者の権利を奪う」と再検討を強く指導。結局、社協側は新たにパート勤務6人を確保し、2月からの通所介護再開にめどがついたという。

 栗原事務局長は「営利企業ではないので、特養ホームの態勢を守るために、いったん在宅介護を切る選択をした。再開後は末永く対応できるように努力したい」と話している。

■高い高齢化率 採算取れず

 「高齢化率の高い村で、介護サービスが受けられないのは非常事態だ」。福岡県矢部村の介護保険事業者が在宅サービスを廃止した事態を、同県の介護保険課 は憂慮する。専門家は、第2、第3の矢部村のようなケースが出ることは大いにあると指摘する。財政が厳しく、人材確保も簡単ではない過疎地ほど、運営が立 ちゆかなくなる介護保険制度の実態が浮かび上がっている。

 一般的に過疎地では、労働人口が少なく、介護に当たる人材の確保は難しい。一方で、高齢化率は高いが、人口の絶対数が少ないため利用者も少ないという現 状がある。事業としての効率は悪く、十分な採算が見込めないため、民間企業の参入はほとんどない。厚生労働省によると、離島部や山間部では、地方自治体が 独自で事業を運営する事例が目立つという。

 介護保険制度に詳しい鹿児島大学法科大学院の伊藤周平教授(社会保障法)は「財政が苦しい町村が運営するのは難しい」と指摘。さらに「財源不足のため介 護報酬を年々引き下げている実情もあり、人手不足が深刻化している。矢部村のようなケースは、全国で限界集落が増えている状況ではどこでもあり得る。保険 料制度の抜本的見直しや、税金による補てんが必要」と話している。

●●コメント●●

0 件のコメント: