2008-01-31

戦力化する派遣エンジニア

:::引用:::

派遣エンジニアの市場が拡大している。1990年代後半から2000年代前半にかけて、国内の製造業は人材採用を抑制すると共に、派遣エンジニアを活用するようになり、年々その役割は高まっている。


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国 内人材派遣市場に占める技術系アウトソーシング市場の比率(左上)と技術系アウトソーシング市場の推移。技術系アウトソーシング市場が2005年度に大幅 に伸びているのは、2004年の労働派遣法改定により従来の請負などの形態も特定派遣に含まれるようになったため(出所:厚生労働省、メイテック)

  労働市場における非正規雇用者の増加が言われて久しい。総務省の調べによると2006年には33%、3人に1人が非正規雇用者となっている。この非正規雇 用者の労働形態は、パート、アルバイト、契約社員などがあるが、最近何かと注目されているのが「派遣社員」だ。派遣会社に登録し、仕事が来たらその時に雇 用契約が発生するという労働形態で、社会問題として取り上げられることも多い。


派遣エンジニアは正社員
 言葉のイメージからは「派遣社員」と同じに思われがちな「派遣エンジニア」だが、実際は派遣エンジニア会社の正社員であることがほとんどで非正規雇用者 の枠には入らない。労働者派遣法では、登録制の一般派遣と、雇用制の特定派遣に分かれており、いわゆる派遣社員は一般派遣、派遣エンジニアは特定派遣にあ たる。

 2005年度の国内人材派遣市場の規模は4兆531億円。このうち特定派遣や、派遣エンジニア会社がプロジェクト全体を請け負う「請負」などの技術系派 遣市場は約23%にあたる9,254億円。2000年度に比べて2倍以上に拡大している。市場を構成するのは、メイテック、アルプス技研、VSNなど派遣 エンジニア専門の企業と、グッドウィル、スタッフサービス、テンプスタッフなど一般派遣業も行う企業の2グループに分かれる。派遣エンジニア専門の会社は 積極的な新人募集を行っており、2008年入社では大手3社を合わせて1,000人近くに達するもよう。最近では、派遣先となるメーカーと人材採用で競合 することも多くなっており「現場で活躍している先輩エンジニアとの懇談会を設けるなどして内定辞退が起こらないようにしている」(採用担当者)という。

 さらにキャリア採用比率の拡大に加えて、中国などの海外人材も視野に入りつつある。メイテックやアルプス技研は、中国に研修センターを設けて国内企業向けにエンジニア育成を行っている。まだ年間数十人規模だが、今後増加して行くことは間違いない。

インソースとアウトソース
 グローバル化などにより開発サイクルが短くなる一方で、製品の高機能化によりさらに複雑な開発を行う必要がある現在の製造業にとって、派遣エンジニアは 必要不可欠な戦力となっている。特に自動車、電子機器業界の、CADによる設計や製品の評価・検証などで活用されることが多い。

 しかし現時点で製造業が派遣エンジニアを使う最大の目的はコスト削減である。メイテックの調査では、派遣エンジニアを活用する最大の魅力として、製造業 の技術部門担当者の約66%が「固定費を変動化することによる雇用リスクの低減」を挙げており、新技術導入への期待など積極的に活用するという回答は少な かった。

 今後の製造業では、正社員である「インソース」と派遣エンジニアなどの「アウトソース」をどのように有効利用できるかが、企業の競争力として大きな要素 を占めるようになる可能性は高い。メイテックの西本甲介社長は「技術伝承を含めて企業の核となるインソースとその価値を高めるアウトソースを融合すること でグローバル競争での勝ち残りが可能になる」と話している。


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