北陸の労働市場で、人手不足にもかかわらず、企業が雇用を手控える傾向が出てきた。 北陸三県の有効求人倍率は、直近の昨年十一月まで三カ月連続で前年同月を下回り、求人 数も減っている。原材料高や改正建築基準法の影響などで企業収益が悪化し、コスト削減 が経営の最重要課題となっているためで、受注が好調な製造業からは「仕事があるのに人 が足りない。人がいても雇えない」との声が出ている。「建築基準法の改正でビル建材の受注が今後も落ち込む。もともと減らす予定だったが 、段階的にパート従業員を削減していく」
アルミニウム製建材などを手掛ける三協・立山ホールディングス(高岡市)は、昨年九 月時点でグループに約千人いたパート従業員を今年五月までに五百人にまで削減する。旧 三協アルミニウム工業と旧立山アルミニウム工業の製品統合や開発などで人数を必要とし ていたが、めどが立ったこともあり、既に三百人を減らしている。
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近年の景気回復の局面で、増収基調の製造業を中心に設備増強が活発化、これに伴い、 人手不足が各社の懸案となっていた。また、石川県鉄工機電協会によると、鉄鉱石やステ ンレス、ニッケルなどの鋼材価格はここ五年で三―四倍に膨らみ、原材料高が好調な企業 収益を圧迫するようになった。
加えて、昨年六月に施行した改正建築基準法の影響も目立ってきた。建築確認の厳格化 で、工期の遅れなどが発生し、企業にとって新しい不安材料となっており、仕事があって も雇用を控える動きが広がってきた。
間仕切りメーカーのコマニー(小松市)は「改正建築基準法や株安などマイナス要因が 多く、労務費などのコスト削減はシビアにやっていかざるを得ない」とし、工作機械の中 村留精密工業(白山市)も「派遣社員などで人件費の抑制を検討していきたい」とする。
石川労働局によると、二〇〇七年十一月の全産業の新規求人状況は、前年同月比11・ 8%減の八千五百四十三人。製造、建設、情報通信、運輸、飲食店・宿泊、サービスなど ほぼ全業種で前年割れとなり、「企業の採用意欲の減退が表れた」(同労働局)。建設業 は九月から三カ月連続で前年割れが続いており、十月は20・3%減、十一月は16%減 と二けたの落ち込みを示した。
燃料高騰の影響を受ける運輸業も、十一月の求人数は7・4%減。思うように燃料費の 高騰分を運送価格に転嫁できない中、各社はコストカットの努力を続けており、金沢市内 の運送業者は「管理部門で欠員が出ても補充しないなど、人件費抑制に努めている」と強 調する。富山の事業者も「売り上げに直結するのでドライバーは減らせない。貨物量自体 も減る傾向にあるので、状況を見極めたい」と対応に苦慮している。
増収基調から一転、収益下ぶれの圧力が強まってきた北陸の企業。製造業関係者は「世 界的な需要の増加で、業績アップのチャンスなのに、人が雇えないとチャンスを逃しかね ない」ともどかしさを募らせている。
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