2008-11-10

著者インタビュー・日本語教師の魅力を伝えたい

:::引用:::
コラム「ワイワイガヤガヤ日本語学校」で、日本語学校で学ぶ多様な学生の様子を生き生きと伝えている嶋田和子先生が、ご自身の日本語教師としての経験を基に、『目指せ、日本語教師力アップ!OPIでいきいき授業』(ひつじ書房刊)という書籍を出しました。

 日本語教師をしている方、日本語教師を目指す方に、この仕事の魅力と教師力UPの大切さを伝える一冊です。この本を作った理由や、日本語教師の実情や魅力を、嶋田先生に伺いました。


―日本語を学ぶ人、日本語を教える人

 日本の大学などで学ぶ留学生は、現在11万8千人ほどいます。さらに日本語学校で日本語を学ぶ留学生・就学生は約3万です。日本語教師の総数は把握でき ていませんが、日本語学校で教えている教師は5,226人となっています。またイーストウエストには55名の先生がいます。

 大学で日本語教育を専攻しても日本語教師になるとは限らず、多くの人がほかの仕事をしてから、やっぱり学んだことを生かして日本語教師をやりたいといって来る場合と、主婦をしていた人が子育てを終えて、もう一度仕事をしたい時に選ぶことが多いです。

 そして女性が多いですね。男性は非常に少ないです。それは、収入的な問題があることも理由の1つです。


異文化交流の魅力についてつづった前作『キムチと味噌汁』(教育出版社)
―嶋田先生が日本語教師になった理由

 40年前に大学で英語を勉強していました。でも4年制大学を卒業しても、(当時の日本企業では)お茶くみしかできないと思って外資系の企業に入りまし た。その後、結婚して子育てをしつつカウンセリングを3年くらい勉強して、カウンセラーとして仕事を始めました。そのカウンセリングをしている時に、相手 と紡いでいる言葉に興味を持ちました。相槌とか日本語そのものについて、初めて立ち止まって考えてみましたね。

 特に大学で聴講生をしていて、英語のカウンセリングを聞いた時に、言語が違うとこんなに違うということを知って、もっと日本語に興味を持ち、ちょっと日本語を勉強したらものすごく面白くなって。

 今では養成講座で420時間、半年とか1年かけ、何十万円というお金を出して日本語教師になるんですが、私が学んだのは、数万円で短期間の学習でした。 そして、ラッキーなことに、すぐに教壇に立つことになりました。カウンセリングの経験も関係性を作るうえですごく生かされました。 

―日本語教師になる人は増えてない

 今は、人手が足りない学校もたくさんあります。それは、1つには、日本語教育を専攻していても、教師になる人が減ってきていることが影響しています。でも、その分本当にやりたい人がはいってくるように思います。

 しかし、今年、文部科学省等が出した「留学生30万人計画」もあるので、教師の数は絶対足りなくなると思っています。ちょっと大変な面もありますが、こ んなに魅力ある仕事なので、日本語学校の本当の姿を多くの人に知らせたくて、JanJanにも書いていますし、『キムチと味噌汁』(前作)も出しました。
 
 日本語学校は進学のための予備教育機関と見られがちですが、そういった側面は一面的で、いろいろな学習目的の人、いろいろな立場の人が学んでいます。ロ シアの学生が日本のことを知りたくて1~2ヶ月くらい来るとか。留学生の本当の姿、日本語学校の存在意義を知ってほしいと思っています。

 私が大学に移らずに日本語学校にいるのは、日本社会の入口で留学生を迎える日本語学校って、とてもやりがいのある仕事だと思っているからです。大学の留 学生の場合は、大学で何を勉強するかが明確なんですよね。でも、日本語学校の学生は、大学に行きたい人もいますが、「自分ってどうしたらいいんだろう?」 「母国で何度も大学に失敗したけど、自分の人生を日本で切り開きたい」とか、いろんな人たちが来ていて、その人の人生の選択に関わる大事な存在なんです ね。

 あまり理解されていないため、色眼鏡でみられたり、受験のための学校みたいに思われるのは残念だと思います。もっとみんなに知ってもらうためにも、気楽に来てもらえる場所にしたいんです。


著者:嶋田和子
出版社:ひつじ書房
定価:2400+税
発行日:2008年9月25日
―本の紹介 OPI(Oral Proficiency Interview)とは

 この本『目指せ、日本語教師力アップ! OPIでいきいき授業』は、すでに日本語教師になった人を主な対象にしていますし、OPIを柱にしているので、それを知っている人、知ろうとしている人向けですね。

 OPIとは、30分のインタビューでその人の会話能力をきちんとした評価基準で判定し、評価するテストのことです。普通の会話試験だとあらかじめ決めら れた質問があるんですが、そういったものはなく、出てきた会話から話題をスパイラルにあげていきます。相手の話をよく聞いてそこから話を展開していきま す。

 たとえば、カップラーメンをよく食べると言えば、カップラーメンとラーメン屋さんのラーメンを比較させてみるとか、次には、食文化に関する質問をしていくなど、こうやってレベルを上げていきます。だから教師力のUPになります。

 それと相手の話をじゅうぶんに待たないと引き出せないので、教師の話しすぎを抑えられるんです。OPIを活用して教師力アップを図りたいと思っています。今までは会話試験として使われる面が強かったけれど、評価だけでなく他の使い方もあるのでは?という提案なんです。

 私はトレーナーとして、あちこちでワークショップをやっていますが、先日は大阪府の高校の先生たちがOPIに興味を持って、その先生たちとも「面白いですね」と言う話になりました。

 日本の国語教育は文学の鑑賞系が多く、論理的に考えて、表現して、伝え合うという訓練をしてないですね。だからみんな目からウロコでした。OPIには しっかりとした軸があるので、上にいくためにはどんなことが必要かがよく分かります。例えば、意見を言う、そしてもっと上の段階に行くためには、裏付けの ある意見が言えることが必要なんだ、というふうに、どうすればもう1つ上のレベルにいけるか、という縦軸がはっきりしています。日本では論理的に話すため の教育があまりされていないことから、実は、次は一般の人や教師のOPI活用法を書いてほしいという話も来ています。


ー日本語教師という仕事の魅力

 相手が人だということ、しかも外国の人っていうところが魅力です。人が相手という仕事はたくさんありますが、外国の人と真剣に話し合う、毎日がそんな刺激的な場ということは、他の仕事にはあまりないと思います。

 私が1教えると、学習者から2つもらっているように感じます。知識ということでなく、いろいろな気づきです。私が当たり前と思っていることが違うわけですね。そういう質問ややりとりが毎日ある。

 もう一つは彼らとのやりとりで、自分が知らないことに気付いて、もっと学びたくなるし、どんどん世界が広がるということです。この20数年でいろんな意 味で幅が広がったと思います。人間的な面でも知識とか知恵の部分で広がったかなあと思います。相手から想像もしないような質問がきて、自分のこととか日本 の社会にある規範とか、いろいろ考えさせられました。

 たとえばサラリーマンなどが来る異業種交流会などで、こういった留学生とのエピソードなどを話すと、みんな「へー」って驚くんですね。でも私たちの学校では当たり前です。ということはそれだけ「学びの海」の中にいられるということだなあって思います。

 今、教科書を作っているんですが、使える日本語、伝え合う日本語、自己表現のための日本語を習得できる本にしたいと思っています。


◇インタビューを終えて

 コラム・ワイワイガヤガヤ日本語学校を拝見していて、以前からお会いしたかった嶋田先生に、インタビューという場を借りてお会いすることができて光栄で した。先生の書かれるコラムから感じていた、日本語学校の学習者たちに対する深い愛情や、仕事に対するこだわりや誇りを今回のインタビューでも感じまし た。

 訪問させていただいたイーストウエスト日本語学校の校内には、学生たちが作った俳句や、習字の作品が飾られていました。嶋田先生はそれを愛おしそうに見つめながら、丁寧に解説してくださいました。

 外国で暮らす人にとって、毎日通う語学学校はとても大切な居場所だと思います。そんな居場所を心をこめて作っている先生たちの努力は、学生たちに必ず伝わっていると思います。素敵な学びの場、イーストウエスト日本語学校に私も通いたくなりました。
●●コメント●●

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