県内に住む10万人以上の外国籍の人のうち、約3万3千人が就労する(05年国勢調査)。法務省などの推計では、全国の外国人労働者は不法就労者も含めて約85万人。日本は、これまでどんな政策をとり、どう受け入れてきたのか
外国人労働者の雇用についての政府の方針は、こうだ。27種類の在留資格のうち14種類について教授や研究など「専門的・技術的分野」と して就労を可能にし、積極的に受け入れる。一方、それ以外をいわゆる「単純労働者」として、日本経済や国民生活への影響などを理由に、受け入れを認めない というものだ。
80年代半ば以降、日本社会は、急速な円高の進行やバブル経済などを背景に外国人労働者や不法就労が増加し、単純労働者の受け入れの是非が議論になった。
そこで政府が取ったのは、「単純労働者は受け入れない」という大きな方針は変えないまま、対応策を打ち出すというものだった。
例えば、(1)89年の入管法改正で、就労可能な資格を6種類から27種類に増やした(2)日系人の3世を「定住者」という在留資格に位置づけた(3)実習という名で就労できる「外国人研修・技能実習制度」を93年に創設した――が主な柱だ。
この外国人研修・技能実習制度は、日本の高度技能を外国人に教える国際貢献が目的。民間企業で1年間の研修を受けた外国人が、一定の習熟度に達したと認められると、続く2年間は技能実習に移るもので、「労働者」として就労することが認められた。
だが、企業が足りない労働力を研修生や実習生で補い、単純労働者として働かせるなど、理念と現実がかけ離れているのが実態だ。特に研修の 間は労働法制の対象外で、研修生を不当に低い手当で働かせる事例が続出。在留期間が過ぎても帰国しないなど不法滞在につながるケースもある。
外国人労働者に対する違法残業や賃金不払いなど法務省が認定した不正行為は、03年の92件から06年は229件に急増。また、研修・実習中の失跡者は99年は513人だったが、06年は2201人に達している。
06年8月には、木更津市の養豚場に派遣された中国人研修生が、待遇への不満から、受け入れ先の県農業協会役員を刺殺する事件も起きた。この事件が大きな契機となり、制度改善を求める声は高まっている。
外国人問題に取り組むNGO「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」(東京)は、「研修生の労働環境は、低賃金での長時間労働など著しい人権侵害。制度の抜本的な見直しをせずに、受け入れ議論を進めるべきではない」としている。
こうした事態の打開に向け、政府は09年をめどに関連法の改正案を国会に出したいという。しかし、研修制度を廃止して実習制度に一本化することを提案する厚生労働省と、現行制度の存続案で譲らない経済産業省が対立している。
そうした中、政府の経済財政諮問会議の調査会が昨年9月、制度の見直し案を発表。介護などサービス分野への研修生受け入れを打ち出すなど、現行制度の見直し論議が再び活発化している。
とりわけ受け入れ拡大に積極的なのが経済界だ。日本経団連は同月、現行の研修と技能実習の計3年間に加え、再技能実習で2年、その後さらに3年の在留資格を認めるよう検討を求める提言をまとめた。
背景には、国際的な人材獲得競争が強まっていることや、少子高齢化の急速な進展で経済と社会保障の新たな担い手になるとの期待感があるようだ。
■■外国人労働者に対する政府の対応■■
1960年代後半~
高度成長期の労働力不足から、経済界が外国人労働者の受け入れを要請。政府は67年、いわゆる単純労働者は「受け入れない」と方針。
80年代半ば~
バブル経済下で外国人労働者が急増。労働省(当時)は88年、専門職分野は「可能な限り受け入れる」が、単純労働職については「十分慎重に対応する」と門戸を閉ざす。
90年代~
バブル崩壊。89年の入管法改正(90年施行)で日系人は「定住者」の資格で就労を合法化。93年に「外国人研修・技能実習制度」を新設。
2000年代~
グローバル化や少子高齢化を背景に、外国人労働者を巡る論議が再燃。07年、政府の経済財政諮問会議の専門調査会が技能実習制度の見直し案を発表。
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