「先行きが読めない。何か手を打ちたいのだが、今はそれも思いつかない」
約60軒の宿泊施設が立ち並ぶ日本三名泉の一つ、下呂温泉(岐阜県下呂市)。同温泉観光協会の担当者は、世界的な金融不安や円高の進行による外国人観光客の落ち込みに表情を曇らせた。
同協会によると、2005年の愛・地球博を契機に、宿泊施設では外国語が話せるフロントマンを配置したり、外国人向けの案内パンフレットを作成し たりしてきた。その結果、04年には約6200人だった外国人宿泊客が、昨年は約1万6300人に増えた。しかし、今年7月に前年割れに転じて以降、8月 は627人(昨年1122人)、9月は639人(同1367人)と約半数に減少。特に大多数を占めていた韓国、台湾からの客足が前年比で5割~8割も落ち 込んでいる。
最も外国人の受け入れ態勢が整っているホテル水明館でも、今月の予約は昨年同月比で約70%減、キャンセル率は60%。担当者は「インドネシアなど新たな市場を開拓しなければ……」と話すが、すぐに客足につながる保証はない。
古い町並みで知られる岐阜県高山市では、まだ円高などの影響は顕著になっていないが、飛騨高山旅館ホテル協同組合理事長を務める堀泰則・ひだホテルプラザ社長(60)は「夏頃に比べて3割近くユーロ安が進んでおり、今後の予約が心配だ」と不安げだ。
日本政府観光局によると、10月に日本を訪れた外国人は73万9100人(前年同月比5・9%減)。最も多い韓国からの訪日客は、韓国ウォンが円 に対して1年で4割も安くなったことなどが影響し、18万8800人(同15・2%減)にとどまった。7月から4か月連続で前年同月の数字を割り込み、9 月には前年同月からの減少率が、韓国で通貨危機のあった1998年10月以来、10年ぶりに20%を超えた。2番目に多い台湾は12万6300人(同3・ 3%減)、米国も6万8000人(同14・3%減)となっている。
三重県内で三つのゴルフ場を経営する「白山ココパリゾート」には昨年度、韓国と台湾から宿泊とプレーを目的にした旅行客が延べ約3万4000人訪 れ、全体の15%を占めた。しかし、今年は半分程度に減少する見込みで、韓国人客の来月の予約は昨年の5分の1。東本裕治支配人は「韓国の旅行会社からゴ ルフツアーのキャンセルが相次いだ。割安な中国や東南アジアに流れているのではないか」とみている。
外国人の買い物客を見込む店も悩みは同じで、名古屋市中区大須にある電化製品店の店長(45)は「9月頃から客足が昨年の半分ぐらいになり、店全 体の売り上げも落ちた」とがっくり。観光で来日した米国人男性(56)は、「ドルを円に両替したら予想以上に目減りしてしまった。土産も少し減らさないと いけない」と話していた。
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