2008-11-28

中国、パニック利下げ 失業者急増で社会不安 焦る政府

:::引用:::
中国が実施した過去11年で最大幅の利下げは、失業者の急増や社会不安増大、この20年で最悪の景気減速への危機に瀕(ひん)しているとへの焦りを、中国政府自らが示した。パニックに近い状態にあることの証左といえる。

 中央銀行の中国人民銀行が26日に、政策金利である1年物基準貸出金利を1.08ポイント引き下げて5.58%にしたが、これは1997年のアジア通貨 危機以来となる大幅な引き下げ。1年物の預金金利も同じ幅を下げて2.52%とした。3週間ほど前には温家宝首相が4兆元(約55兆8400億円)規模の 景気刺激策を公表したばかりだった。

 ソシエテ・ジェネラルのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、グレン・マグワイヤ氏(香港在勤)は「中国は失業率や社会不安と一線を画そうとしている」 と指摘。中国共産党政権への「抗議行動が最高潮に達した1989年の天安門事件以来、中国政府にとって最も困難な局面にある」との見方を示した。

 実際、中国で社会不安は日に日に現実のものとなってきている。新華社電によると、広東省で今週、警備当局約1000人が失業者のデモ収拾に当たったとい う。デモ隊は警察車両を横転させたり、民間企業の設備を破壊したりした。尹蔚民・労働社会保障相は、雇用見通しが悪化するなかで労働争議が「最大の懸念」 だと指摘していた。

 中国は2005年に英国を追い越し、GDP(国内総生産)規模で世界4位の経済大国に浮上した。過去30年間の成長率は平均9.9%に達する。1978 年の市場開放政策への転換以来、この30年間で経済規模は実に68倍に拡大した。そこに何らかの歪が広がっていたのだろうか。

 人民銀はまた、市中銀行に義務付ける預金準備率も引き下げる。大手銀行の準備率は16%で引き下げは12月5日に実施。中小銀行については14%(現行16%)に引き下げる。

 人民銀は「銀行システムの十分な流動性と安定した融資の伸びを確実にし、金融政策が経済成長を支えるために積極的な役割を演じる」ためと説明した。

 ≪「財政支出が必要」≫

 BNPパリバ証券アジア部門中国・香港リサーチ責任者、アーウィン・サンフト氏はブルームバーグテレビに出演、中国の今回の利下げについて以下のように述べた。

 --利下げの背景は

 「今回の利下げは驚きだ。いかに経済を回復させ、まさに今起きている景気減速をどう押しとどめるか、中国政府が明確に取り組んでいるということ」

 「中国経済はレバレッジ比率が低いため、基準金利はこれまで経済の牽引(けんいん)役というわけにはいかなかった」

 「政府は景気減速を和らげるために手を尽くそうと必死になっており、農業、医療、教育に巨額を投じている。もし中国が今後5~10年間持続的に成長したいのなら、これらには積極的な財政支出が必要だ」

 「今回の利下げは不動産市場への支援の意味もある。多くの業者が困難な状況で、レバレッジ過多に陥っている。不動産業者の抱えている問題は利下げでも解決が難しい」

 --利下げで見込まれる効果は

 「企業や家計は今回の金利引き下げにそれほど敏感に反応しない。家計はリスク回避傾向にあり、企業や民間部門は資金を国営の金融機関から調達しないから だ。経済の最もダイナミックな部分は、利下げに敏感ではない。今回の利下げは、景気減速への対策を検討している政府がパニックに近い状態にあることを示し ている」

 「G20(20カ国・地域)の首脳による緊急首脳会合(金融サミット)に先駆け、中国は景気刺激策を発表した。この対策の中で興味を引くのは、インフラ 整備や廉価な住宅の供給といった中国が特に必要としていない分野への投資ではなく、中国がまさに必要としている医療、教育、農業へのより一層の投資が行わ れることだ」

 「中国政府は対策の財源を全額拠出するつもりはない。今のところ4分の1拠出するとしている。政府は財政黒字から予算不足へ移行すればいいわけで、資金 拠出は簡単なはず。米国と反対に、中国ではレバレッジ過多よりも、レバレッジをかけた運用が広まっていないことの方が問題だろう」(Kevin  Hamlin、Li Yanping)
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