2008-11-28

パソナグループ(4)政治活動は休暇扱い

:::引用:::
 ■社員の目線で制度導入

 社会的活動家であるソーシャル・アクティビティストを目指すため、パソナグループは、さまざまな休暇制度を充実させている。例えば、選挙に立候補する場 合などに取得できる「政治活動休暇」。無給だが4年間を上限に休暇扱いとなる。選挙に出馬して、落選した場合は復職できる。現在2人が取得しており、地方 議員と議員秘書として活躍中だ。

 NPO法人(特定非営利活動法人)に参加する場合の休暇制度も用意している。休暇を取得せずに休みの日にボランティア活動に従事した社員には、 ポイントを付与するシステムも。ポイントを集めた場合、グループ企業で障害者雇用に力を入れている「パソナハートフル」が社内販売する、障害者が制作した 美術作品などと交換できる。

 ◆オープンな人事異動

 こうした休暇制度は、すべて社員の目線で導入されている。このほか「農業体験や、癒やし体験休暇などが社員から提案されている」(南部靖之社 長)という。いち早く新設した裁判員休暇制度については、有給にすることや裁判後に心理的なフォローを行うことなどを検討している。こうした休暇は基本的 には無給が多いが、通常のケースだと会社を辞めて取り組む必要がある。しかし、休暇をとって参加できるため、社員の活躍の場が社会に広がる。社会保険が継 続できる実利的なメリットも大きい。

 グループ企業も含めた社内の人事異動は、希望の仕事に就けるようにオープンポジション制度を設けている。これは、特定のプロジェクトやポストで 人材が必要となった場合に全社員に応募要件がメールで配信される仕組み。「われこそは」と思う人材は自由に応募できる。新規事業などを検討するシャドー キャビネット(影の内閣)では、女性就労省など各省の大臣には執行役員が就くが、その補佐官はすべて若手社員が自ら希望して参画する。もっとも有村明執行 役員人事部長によると、「入社早々で、まだ自分の仕事を覚えないといけない人まで補佐官に応募してしまう。積極的なのはよいことだが、来期募集から勤続3 年以上という条件をつけることを検討する必要がある」と苦笑する。

 一方、社員の交流にも熱心に取り組んでおり、社員や登録スタッフ限定のサイト「ファミリータウン」を開設している。社内報を兼ねたこのサイト は、育児や介護の相談ができ、「ベビーカー譲ります」などの交流情報も満載だ。ネット上の交流だけでなく、運動会も毎秋、東京、名古屋、大阪の3地区で開 催する。「仕事を離れて違う職場の人とコミュニケーションがはかることができる」(有村執行役員)との効能がある。

 ◆社会貢献も重視

 社会貢献を重視するパソナグループには、事業から独立した「日本CHO協会」という組織の事務局も置かれている。CHOは、チーフ・ヒューマ ン・オフィサー(最高人事責任者)の略。人材活用、能力開発など人材マネジメントについて企業の人事担当者が集まって研究する組織だ。日本CHO協会の須 東朋広事務局長は、「時代の変化に対応した人事機能の研究や提言を行っている」という。

 協会は2004年5月に外資系企業を中心に約30社で発足。現在の会員は約1600社まで拡大した。加盟料は無料で、一部の人事向け実務講座以 外への参加は会費を徴収しない。メンバーは企業のほか大学、中央官庁など幅広い。日本銀行や経済産業省、厚生労働省なども参加している。8割が口コミで参 加し、雇用や人事に関する研究活動や提言活動を行っている。

 日本の雇用・人事制度はまだまだ改善の余地がある。一種の社会貢献活動である日本CHO協会から生まれた提案が、制度“改革”につながることに期待がかかる。日本CHO協会は、雇用や人事制度に関する社会貢献活動といえるだろう。(財川典男)

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 ■メモ 南部靖之社長は、ベンチャーの雄として一時代を築いた。さまざまな起業家が一世を風靡(ふうび)した後に落ち目になる中、創業して30年が経過した現在でも注目され続けている理由は、常に社会性を意識してきたからだ。

 人材派遣は規制緩和で日雇い派遣のようなゆがみを生んでしまった。南部社長は、「派遣法改正には大賛成」と言い切る一方で、もうかるという理由 だけで「日雇い派遣」や「製造現場派遣」には手をださなかった。その考え方の根底には、「売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良し」という近江商人の 精神が流れている。
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