2008-11-25

年長フリーター、就職支援 35歳超…高齢化深刻 派遣会社が「仕事学校」

:::引用:::
バブル崩壊後の就職氷河期に正社員として就職できなかった「年長フリーター」の高齢化が社会問題化している。政府が 10月末に発表した追加経済対策は、年長フリーターを正社員として雇用した企業への助成金支給を打ち出した。民間でも今月、丸3年を迎えたフリーターの就 職を支援する「学校」が年長フリーターの支援に力を入れている。

 人材派遣大手「パソナ」は平成17年11月、東京都内でフリーター向け教 育・研修事業「仕事大学校」を開校した。研修生は2カ月の基礎研修後、同社が紹介する派遣先企業で原則1年の実務研修を受ける。実務研修中は給与が支給さ れ、授業料9万4500円はその期間中に分割払いできる仕組みだ。

 10月28日に11期生10人が入校した。24~32歳の男性8人、女性2人。うち8人が大卒だが、正社員の経験があるのは2人。残りはアルバイトなど非正規雇用で働いてきた。

  30代は3人おり、埼玉県川越市の男性(31)は氷河期まっただ中の13年に都内の私大外国語学部を卒業した。コンビニエンスストアでアルバイトしながら 公務員を目指したが、挫折。「最近、ワーキングプアとか言われて焦りというか、今の状況を変えたいと思った」。研修では「アルバイト生活では身につけられ なかった礼儀などを基礎から学びたい」という。

 3年間で約170人が受講。これまでに卒業した7期生までの約130人の進路をみると、3割が実務研修など同社から派遣された企業でそのまま雇用された。3割は自分で就職活動した企業で雇用され、2割は派遣社員、残り2割は求職中という。 

  開校当初は20~29歳までのフリーターらが対象だったが、現在は「30代前半程度」に拡大した。パソナの山本絹子専務(53)は「フリーターは年々、高 齢化している。就職氷河期世代が就職できず、基礎的な技能を積めなかったためで、特に35歳を過ぎた人が深刻だ」と話す。

 自治体も頭を悩ませている。神奈川県が設置した「かながわ若者就職支援センター」(横浜市)では、4月からの半年間の新たな利用者1074人のうち242人(23%)が30代。さらにこのうち54人(22%)が35歳以上で、その数は年々増えている。

  厚生労働省の政策で埼玉県が設置した「ヤングキャリアセンター埼玉」(さいたま市)では、4月からの半年間の新規利用者3054人のうち4分の1が30 代。7月までは対象を「34歳以下」としてきたが、厚労省の通知を受けて「おおむね34歳以下」に対象を広げた。6月には年長フリーター向けに「正社員へ の道☆入門」と題した面接時の自己PR法を学ぶセミナーを開始。これまでに約80人が受講した。

 センターの岸田正寿主幹(41)は「30代の求人は企業も年齢的に即戦力を求めており、ある程度の技能がないと就職は難しい。だが、この年代はアルバイトでも何らかの経験を積んでおり、それを認識して表現できれば機会はある」と話す。

 ■「仕事大学校」校長 元連合会長・鷲尾悦也氏に聞く 

 技能身につける機会を

 パソナ仕事大学校の校長を平成18年から務める鷲尾悦也・元連合会長(70)に事業の意義を聞いた。

 --正社員中心の労組の元トップが非正社員のキャリアアップのための校長を務める理由は

  「私が連合会長を退いた平成13年ごろから、雇用の流動性が高まり職業選択が多様化した。だが、非正規雇用は正規に対する否定語で前向きではない。むろん 企業が賃金を抑えるため非正規雇用に頼ることも多いが、たとえばワークシェアリングが進んだオランダモデルのような多様な働き方があってもよいのではない か」

 --非正規雇用が労働者の3分の1を占め、格差の拡大で日本社会が疲弊したとの指摘がある

 「問題は、個々人が技能を 身につける機会がないことだ。現在の大学は基礎教育なのか職業教育なのかはっきりせず、学生は技能を身につけないまま社会にほうり出される。苛烈(かれ つ)なコスト競争をしている企業は、自ら技能を持ち、売り込んでくる人材を求めている。技能のない人を雇えというのは無理な話だ」

 --仕事大学校の役割は

 「連合の幹部の中には、私がパソナで校長をやっていることにいい顔をしない人もいる。派遣業界の現状を知らないからだ。実践的な教育・研修を行う本校が貢献できる面は小さくない」

  ■年長フリーター 国の定義でフリーターは15~34歳。うち25歳以上を年長フリーターと呼び、昨年は全国で92万人と24歳以下(89万人)を初めて 上回った。年長フリーターは35歳を超えると国の定義から外れ「不安定就労者」と呼ばれる。政府の経済対策は「年長フリーター等」として対象を39歳まで 拡大した。


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