2008-11-27

パソナグループ(3)農業救う人材を育成

:::引用:::
 ■新発想の「舞台」を確保

 人材派遣業のパソナグループが農業にかかわりを持ったのは、2003年にさかのぼる。団塊世代を中心に田舎暮らしや農業への関心が高まっていたことか ら、中高年を対象とした約1カ月の農業インターンプロジェクトを秋田県大潟村で実施した。04年からは若年層を対象に約6カ月に期間を延長した制度に改め た。

 ◆チャレンジファーム

 05年には東京都千代田区大手町の本社ビル内に人工光による水耕栽培施設「パソナO2」をオープンした。ビル内で手がける農業として話題になっ た「パソナO2」は、社員や登録スタッフの福利厚生施設としても利用されており、収穫した野菜は社員食堂で提供されている。株主総会後は株主による稲刈り 体験なども行っている。

 また、農林水産省の補助を受けて中高年を対象にした「農林漁業ビジネス経営塾」のほか、農業関連ビジネスのスキルを磨く「アグリ-MBA」など 農業関連人材の育成にも力を入れている。「アグリ-MBA」の受講者は、就農を目指す人、農業と飲食業を組み合わせた起業を模索する人など、さまざまだ。 なかには、会社員が売上高や利益率などの数字をベースにして実家の農業再建策を作成するために受講したこともある。「アグリ-MBA」の学長をつとめるノ ンフィクション作家の石川好氏は「農業は変化の少ない産業だが、若い人の新発想で新しい農業が誕生するのではないか」と期待を寄せる。

 ただ、「農業を目指す人は多いが、農地を探すのは個人では難しい。当初3年間は栽培がうまくいかなかったりすることもある。半年程度の農業研修 だけで就農するのは困難」(山本絹子取締役専務執行役員)なことが分かった。そのため今年度からパソナグループが農地を確保し、選抜した就農希望者が農業 に取り組む「チャレンジファーム」制度をスタートさせた。

 3年間の有期雇用で採用したパソナの社員が、同社が確保した農場で栽培技術や農業経営を学びながら就農する仕組みだ。3年間は月給約20万円が 支給される。住居も農地の近隣に用意し、グループ社員と同様の福利厚生を受けられる。4年目以降の独立就農や農業関連事業で起業する場合はパソナグループ が全面支援する。農場の確保は市町村が実施している特定法人貸付事業を活用する。

 第1弾として兵庫県淡路市に農場を2ヘクタール確保し、カブ、キャベツ、大根など春野菜の作付けが始まった。神戸市中心部から車で約30分の立地なので、観光農園としても有望だ。

 ◆農援隊を全国展開

 選抜された7人は「農援隊」と命名された。年齢は、20歳代後半から40歳代前半までと若い。販売方法はネットの活用などで消費者に直接販売す る新販路を自ら工夫して構築していく。農場は順次拡大していく予定で、約10ヘクタールまではめどがついている。就農するのには、近隣農家とのコミュニ ケーションも重要だ。「わざわざ激励にきてくれる農家の方もいるし、農援隊が草刈りを手伝って、お礼にバーベキューをごちそうになったこともある」(山本 取締役)と出だしは上々だ。

 チャレンジファームは、全国で増加している耕作放棄地を市町村から借り受けて展開する。農場の確保は、各地の農業委員会から許可をうけるほか、 周辺農家の了解も必要になる。淡路島でスタートしてからは、「長野県、新潟県、神奈川県など全国の12~13カ所から引き合いがあった。現在、千葉県の農 場2カ所を候補地として09年度にスタートするチャレンジファームを選定中」(同)という。3年後には全国10カ所でチャレンジファームを展開する計画 だ。(財川典男)

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 ■メモ

 日本のカロリーベースの食料自給率は、2007年度で39%と4割をきった。半面、耕作放棄地も増加しており、埼玉県1県分の広さの農地が荒れ 地になっている。農業が直面する大きな問題は、担い手の高齢化が進展していることだ。パソナグループの農業事業は、雇用に関する農業の潜在力に着目して独 立就農を目指す若い人材を育成することが特色。まさに農業現場の最大の問題点を解決する。就農希望の人材と高齢化で農業を継続しがたい農家とのマッチング で日本農業の再生をねらっている。
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