野党は「犯罪抑止効果に疑問」「自由の侵害」と批判
(2008年11月27日)
英国で11月25日、欧州経済地域(EEA)以外からの在住者を対象に、生体認証(バイオメトリクス認証)によるID(身分証明)カードの発行が始まった。同IDカードには顔写真と指紋が記録されるという。
同IDカードの発行対象となるのは、外国人労働者、欧州連合(EU)以外の国から来た留学生、および英国市民の配偶者ビザを持つ人々である。
英国で発行が開始された生体認証IDカード(英国内務省のWebページより) |
もっとも、IDカードの方式は当初の案から大幅に改定されている。
英国内務省は当初、2009年までに英国内の空港に勤務する20万人の労働者全員にIDカードを義務化する計画だった。だが、操縦士組合の英国航空操縦士 協会(British Airline Pilots Association)から猛烈な反発を受け、操縦士に対するカードの強制を阻止するため法的措置を取るとまで脅されたという。
こうしたことから、政府は計画を見直し、11月初旬、マンチェスターとロンドン・シティの2空港で18カ月の試験運用を実施すると発表した。
IDカードには顔写真と指紋が記録される。生体認証により本人しか使えなくなることから、企業としても不法就労を把握しやすくなる、というのが政府の見解だ。
とはいえ、多くの雇用主は、労働者の身元をIDカードから照会するためのスキャナを持っていない。そのため、今回のIDカードは、生体認証による完全な身 元チェックが実現するまでの限定的な利用にとどまりそうだ。スキャナが配られるまで、雇用主は肉眼で身元を確認することになる。
また、雇用主となる企業の側は、雇用を保証した外国人労働者について、連絡先の詳細やIDカードのコピーといった記録を保持しなければならない。内務省では2015年4月までに、英国内の外国人の90%に指紋と個人情報を記録したカードの携行を義務づけたい意向だ。
内務大臣のジャッキー・スミス(Jacqui Smith)氏は25日付けの声明で、「いずれ外国人登録は書類でなく生体認証IDカードで行うようになり、雇用主は英国在住外国人の労働ビザや学生ビザを安全かつ確実にチェックできるようになる」と熱弁した。
IDカードは英国政府が47億ポンドの巨費を投じた一大プロジェクトだが、計画の撤回を求める野党や労組、ロビイストから猛烈な批判を浴びてきた。
英国自由民主党の内政問題担当報道官クリス・ヒューン(Chris Huhne)氏は25日、この計画を無用な方策と断じた。「英国在住の外国人はすでにパスポートとビザを持っているため、これほど莫大な予算を投じても犯 罪やテロ、不法移民や不法就労に何ら影響を与えない。これは英国の自由を侵害する行為だ」
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