2008-11-14

中国汚職官僚の巧妙な海外逃亡:実態を実話から読み取る

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 中国では、政府高官な どが汚職の発覚を恐れて海外逃亡する際の一般的なルートが存在する。資産を渡航先へこっそり移し、家族を先に国外へやり、パスポートなどの渡航準備に万全 を期す。目的のカネを手に入れ、突然職場から姿を消し、姿をくらます。さらに、その地での長期居留許可を取得する。これらの過程は、長期的かつ巧妙な計画 が必要なのである。例えば、中国のウェブメディアでは次のような実話を紹介している。

関連写真:そのほかの中国における汚職一掃(反腐敗)活動に関する写真

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   2004年5月20日、孫民(仮名)は、逃亡の第一歩を踏み出すために、慣れ親しんだ故郷を後にした。2日後、彼は米ヒューストンの街角に現れ、逃亡計 画を見事完結させた。「誰も好き好んで故郷を去った訳じゃない。ここでの生活は特に不自由なくいい暮らしをさせてもらってるけど、故郷の親戚とはもう連絡 をとれないよ」と、政府の役人であった孫民はいささか寂しげである。

  このように、不法な手段で金銭を手に入れ国外へ逃亡を図った元役人たちの生活は、孤独との戦いだという。周囲の多くの人が彼の事情を知っているため、外に出ることもままならず、始終不安げに毎日を過ごしているのだという。

   2002年、孫民の息子孫小飛(仮名)は、高校卒業後自費で米国の大学に進学することになった。孫小飛をよく知る友人によると、彼の母、すなわち孫民の 妻は、息子の進学に付きそう形でともに米国に渡り、ヒューストンの郊外に数十万ドルの自宅を購入し、リッチな生活を始めたという。2001年に孫民が視察 で米国を訪れた際、この物件を気に入り、その後当地の華僑が経営する不動産会社を通じてこの館を購入したらしい。また購入に際し、外国人という特殊な身分 のゆえか、更に10万ドルもの大金を上乗せして支払ったという。

  また、孫小飛の大学のクラスメートは、孫小飛が当時から毎日ニューモ デルのベンツを運転してくるなど、クラスの中でも浮いた人物だったと証言している。日頃から彼の父親について特に話題にすることはなく、何かの折に彼の父 親は中国にいると聞いただけで、その他のことは特に知らないという。

  孫民の妻は米国についた後、ニセの資料を集め米国移民局に政治的 事情による庇護を求めた。その事情とは、彼女は第二子を妊娠したが、中国政府は「一人っ子政策」にのっとり彼女の出産を認めないというものだった。彼女は この理由を通じてグリーンカードを手に入れるまでにこぎつけた。このことによって、後から来た孫民も合法的に在留資格を得やすくなった。中国人が政治的事 情による庇護を米国に求める際、「一人っ子政策」から逃れるためという理由づけをすると、90%の確率で同意を得られるそうだ。

  孫民 の妻が2003年に米国に渡った後、孫民は部下に従来のものとは別に、更に1冊旅券を作成するよう指示した。彼は各部門に顔がきくこともあり、旅券の発行 は順調に行われた。この旅券を使い、シンガポール経由米国行きの逃亡が決行された。内情をよく知る人物によると、この巧妙な逃亡計画は1年がかりのもの だったという。

  孫民と同様に逃亡先に北米を選んだ人物として、ハルピンの中国銀行河松街支店元支店長の高山がいる。6億元(90億円 相当)を横領しカナダへ逃亡した高山は、孫民と同じようなルートを辿り、家族を先に逃亡先の国へ渡航させ、目的のカネを手に入れた後、自らも姿をくらまし た。

  高山と孫民に違いがあるとすれば、前者は銀行の貯蓄口座からの横領で、犯行は容易に発覚しやすいが、後者の場合は、多くが賄賂に よる収益であったため、犯行事実がつかみにくいところにある。しかも、すでに辞職した役人については捜査の手が及びづらく、過去の不祥事が取りざたされる こともまれだ。
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  汚職官僚たちが逃亡先に選ぶ国の前提として、 犯罪人引渡し条約が中国と結ばれていない国であることだ。また、移民の多い国というのも逃亡先に選ばれる条件である。これらの国では金銭の受け渡しや、政 治的な事情を理由に亡命を申請することにより、滞在許可が下りやすい。EUの国々では移民受け入れに積極的ではないため、逃亡先に選ばれることは少ない。

   目下、米国やオーストラリアが中国の汚職官僚の会する場となっており、彼らのために、当地の華僑が逃亡計画決行を幇助するサービスまで存在するという。 このサービスとは、法律の目を潜り、当地の弁護士と連携し、依頼人のために不動産購入やマネーロンダリング、在留許可の取得まで世話するという内容で、そ のサービス料金も相当高額だという。

  汚職官僚たちの海外逃亡計画は、大体において1年ほどの準備期間を要するようだ。そのうち、旅券 発行が非常に核となる部分だ。滞りなく出国し、彼の地に入国するための重要な切り札となる。彼らが逃亡の際使用する旅券は、密出国や犯罪者の用いる偽造旅 券と異なり、正真正銘の正式な旅券である。彼らは偽名を使い何冊かの旅券を所持しているが、これらは公安部より正式に発行された旅券なのである。

   江西省の胡長清元副省長の汚職が発覚した際、高峰と胡誠という偽名で本人の写真が貼り付けられた偽の身分証2枚と、陳鳳斉と高峰という偽名による旅券が 2冊見つかった。胡長清は、偽の身分証について、南昌市の某派出所副所長の取り計らいにより発行されたと供述し、当時の副所長とその子供にも身分証を偽造 させ、旅券が発行されるよう便宜を図っていたという。

  専門家によると、権力や金銭などその他の手段で「偽の正規旅券」を手に入れるこ とは難しいことではなく、こうなると、出国してしまえば痕跡が残りづらく、逃亡先で恐れることもなくなるという。汚職官僚の例のように、海外に逃亡する犯 罪人向けの「偽の正規旅券」発行は、今や、国内の公安機関において主要なこづかい稼ぎとなっているともいわれている。(執筆者:祝斌)

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