2008-11-12

日本企業にお勧めなのはハノイ、ホーチミンどっち?

:::引用:::
ベトナムには「ハノイ」と「ホーチミン」という2大都市があり、それぞれ文化がかなり違う。今回はそれぞれの都市の特徴とオフショア開発のポイントを紹介する。(→記事要約へ)

 2008年は日越外交関係樹立35周年を記念して、日本・ベトナムの両国でさまざまなイベントが開催されています。

 2008年9月に赤坂のホテルで開催された「日本・ベトナムビジネスフォーラム」では、ベトナムソフトウェア協会の会長であ るチュオン・ザー・ビン(Truong Gia Binh)氏も参加し、ベトナムIT産業の「モノづくり」へのこだわりを強調しました。この言葉に込められた思いを、ベトナムにおける産業全体でどのよう に共有し、実現させていけるかが今後の大きな課題です。

 さて、前回はベトナムベンダとのオフショア開発におけるコミュニケーションについて解説しました。今回は、ベトナム国内における地域ごとの特性を見ていきたいと思います。

  ベトナムと一口でいっても、地域ごとの違いが非常にあります。日本よりも少し小さい国土ながら、大きな違いがあることを理解することで、日本人がいかに均 質化されているのかを実感するとともに、地域ごとの特性をとらえて、どのようにパートナー開拓していくのか、開発を進めていくのか、また、ビジネスを展開 していくかのヒントにしていただければと思います。

ざっくり分けると北と南

 このように書いてしまうと、ベトナム中部の人に怒られるかもしれませんが……。ここでは簡単に北、つまりハノイの人と、南、つまりホーチミンの人の2つに分けて比較します。

 政治の中心・ハノイに対して、経済の中心・ホーチミン。ほとんどのIT企業はこの2都市に集中しています。


 中国での拠点や委託先を選ぶ際には、北京、上海、大連。少し内陸に行くと重慶、成都など、さまざまな選択肢があり、大前研一氏が著書『チャイナ・インパクト』(講 談社刊)で述べているように、国土の広い国らしくそれぞれの地域に特徴があります。それに対してベトナムは狭い国土にもかかわらず、北と南で明確な違いが あります。これは気候、文化、歴史、政治で違った道をたどってきたハノイとホーチミンだからこそ見られる違いです。

 「北の人は南の人を管理できるが、その逆は難しい」ともいわれており、現地に進出する際にはもちろん、委託ベースでも、相手ベンダのメンバー構成や開発を実施する拠点について議論するのに、これらの地域特性が役に立つことがあるかもしれません。

 また気候もかなり違います。先日もその差を説明しただけで、進出先地域の優先順位を決めてしまった社長の方がいるくらいです。その方は「行きたい所に仕事を作っていく。いままでもそれで大きな間違いはなかった」といいます。

ハノイとはどんな所なのか

 ハノイは政治機能や諸外国の大使館・協力機関などが集中しており、中央政府の影響を非常に受けやすい地域です。そのこともあってか、何事も進み方が慎重である傾向があります。また歴史的建造物や寺社が数多く存在し、その歴史的重みを感じさせます。

 人口は620万人ほどで、微妙な四季の違いがあります。ハノイは漢字では“河内”と書き、市内の至る所に湖があります。人々も街もバイクの喧騒と活気の中にどこか静けさを感じさせ、どちらかというと「情緒」や「静」という言葉が似合う街でもあります。

  現在の傾向として、日系企業の投資先はホーチミンよりもハノイへ向いています。実はハノイは2008年の8月に近隣県を吸収してホーチミンと同程度の人口 になったばかりです。このように、「一国の首都」としてハノイの“格”を上げ、大きな投資を呼び込んでいく流れを作りたい、と政府も考えているようです。

ハノイの特色

 多少古いデータですが、2005年時点では280社のIT企業がハノイにあると推測されています。

 ハノイはベトナムのソフト開発最大手である「FPT Soft」の拠点でもあります。ホーチミン、中部のダナンにもFPT Softの支社がありますが、その規模はハノイほど大きくありません

 FPT Softは日本向けにも多くの仕事をしており、売上高の半分を占めます。会社規模は2500人ほどと、ベトナムのソフト開発業界の中では頭1つ抜けており、ガリバー企業ともいえます。

 FPT Softを含むFPTグループはISP事業、SI事業、携帯・通信事業、不動産開発事業などを行う一大グループ企業です。そのFPTグループの会長が「ベトナムソフトウェア協会(VINASA)」の会長でもあります。

 VINASAはベトナム全土における業界団体という位置付けですが、VINASAの本部がハノイにあることもあって、活動はハノイが中心です。

 またその会員数は、ホーチミンの地域団体である「HCA(The Ho Chi Minh City Computer Association:ホーチミンコンピュータ協会)」の方が多く、ハノイとホーチミンの人々の性格の違いと対抗意識もあり、これをどうまとめていくかが課題です。

 FPT Softだけ、ハノイだけ、という構造では競争原理が働かないため、FPT Softにとっても良い影響はありません。ベトナムのIT産業全体の利益を考えて取り組むべきであると筆者は考えます。

ハノイ人の性格は

 わびさびの感覚や謙譲文化、黙々と仕事に打ち込む姿勢や本音と建前の文化など、一般的にいわれる日本人との類似性はどちらかというとハノイに多く当てはまります。

  ハノイの人々は、もともと中国の漢民族をルーツにしています。政治の中心ということで中央政府の影響と、それから気候に寒暖の差があることも個人的に影響 していると思いますが、それらからくる「慎重さ」があります。また、微妙な四季のうつろいも、少なからずわびさびの感覚に影響しているでしょう。

 年長者を重要な存在として扱う文化は、ともすれば、年長者の発言に会議などの場で表立って反対意見を表明しないのにもかかわらず、後で聞いてみると「あれは少し違うと思った」などということもあり、困惑することもあります。これは特に未成熟な組織で起こり得ることです。

 VINASAやFPT Softの影響のためか、もしくはハノイ市民の方がどちらかというと日本人と似ているというためか、日本向けの仕事を行うソフト開発企業はハノイの方が多くあります。

ハノイの教育機関

  歴史的に政治体制に変更のあったホーチミンに比較して、ハノイでは教育体制も比較的継続性があることから、ハノイの方がより教育者層が厚いといわれていま す。ハノイ工科大学が最難関校であり、多くの企業が注目している学校です。また首相直轄の大学であるハノイ国家大学傘下の自然科学大学や、ハノイ国家大学 工科大学も次いで注目されています。

 企業が作った初めての大学であるFPT大学は2007年からスタートしており、日本語または英語による教育と、実践的な内容が注目を集めています。


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