2008-11-07

「土地と抵抗勢力」(竹中氏)「終身雇用」(勝間氏)が貯蓄から投資阻む(08/11/07)

:::引用:::

<なぜ進まぬ貯蓄から投資>

◆額に汗して働け、金融こそ頭脳労働

勝間 単に金融リテラシーを上げるというだけではなくお金の使い方とか、リスクのとり方から一から説明しないと、なかなかリスクを取って投資をしようという方向に進まないのではないでしょうか。

竹中 その通りだと思いますが、この話は永田町に行くとほとんど通用しませんね。

勝間 そうなんですか。

竹中  つまり金融というのは、「汗を流さないで、あぶく銭を稼ぐものだ」という類の議論が、いまだに横行しています。日本はモノづくりの国であって、一夜にして 巨額の富を得るとか、そういうギャンブルのような産業には手を出さなくてもいいんだといわんばかりの議論をする人は、意外と多いです。

 われわれは家でゴロゴロ寝ていて何もしなかったら、「ちゃんと働きなさい」って言われますよね。でも、日本ではお金はゴロゴロ寝てるんですよね。活用してないわけですよね。

 また、「額に汗して働け」といいますが、金融とは恐ろしく頭脳が汗する、脳が汗をかく仕事だと思います。そういうことを社会的に認知していくということは大変重要ではないでしょうか。

勝間 限界労働生産性と限界資本生産性という話について、ご著書の本で指摘されていましたが、やはりどちらもひどく低いですよね。

◆モノづくりでも英米が上に

竹中 ええ、本当にそう思います。私たちは労働力と資本力を使って付加価値を生み出すわけですから、両方の生産性が高くないといけないわけです。

  最近面白い統計を見つけました。日本はモノづくりの国だといわれますがはたしてそれは真実でしょうか。FRBとシティグループがまとめた、世界の資産価値 でみた製造業トップ100のランキングというものがあります。日本はモノづくりの国だといいますが、ランキングに何社入っているかといいますと8社か9社 しか入ってないんです。トップ100の中に。アメリカは44社入っています。イギリスも11社入っています。イギリスのほうが日本よりモノづくりでは強く なっちゃったわけです。

 結局、気がついてみると、アメリカとイギリスという金融の強い国が、モノづくりも強くなっている。つまり、モノづ くりの企業も、ファイナンスがうまくできないと、きちっとした企業活動ができないわけです。「モノづくりか金融か」という二分法の発想自体がおかしいわけ で、モノづくりを強くするためには金融は必要だし、金融が強くなるためにはベースエコノミーも強くなければいけないわけです。そういった考え方を、社会全 体が共有していく必要があると思います。


◆特殊な資産=土地、の存在の副作用

勝間  実際には悩ましい面もあると思います。いちおう私も『お金を銀行に預けるな』という本を書いて、そこそこ売れたんですが、じゃあそれで、「貯蓄から投資 へ」が進んでいるかというと、あまり進んでいないわけです。また、今回のように日経平均が1万8000円ぐらいが1万1000円台になる過程では、どこで 投資を始めてもなかなか儲からないわけです。そうすると、「やはり投資はダメじゃないか。やはり貯蓄に戻ろう」ということになってしまいます。リスクをと ることがリターンを高めることにつながるんだ、というような体感は、どこから得たらいいのか。これは悩ましいことだと思っています。

竹中 ご指摘のとおりですね。個人の金融資産は1500兆円あって、その半分は銀行預金と郵便貯金に行っているます。それはいまに少なくなると言われながら、もう20年経っているわけで、その20年で少しは変わったけれども、本質的にあまり変わっていないわけです。

  どうしてそうなのかとを私もよく考えるのですが、一つの説明は、日本には、リスクとか、そういうことを考えるまったく必要がない、特殊な資産が存在してい たということだと思います。それは土地です。普通、金融資産はローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンといわれますが、土地というのは、バブ ルが弾けるまでは、ほとんどノーリスク・超ハイリターンの資産であって、とにかく人生の中でこれさえ手に入れれば、なんとか資産運用も成功だったわけで す。そういう特殊な状況で育ってきた人、これはもう私たちの世代みんなそうですから、いまさらリスクとリターンとかいっても、なんかピンと来ないものを 持っているのかもしれない。

 でも、もう土地神話は崩壊しているわけで、そうではないという厳しい現実を受け止めなければならない。私たちは不幸にしてこれまでリスクとリターンという教育をまったく受けてこなかったわけですから、ゼロから勉強しようという、心構えが必要だと思いますね。

◆終身雇用制をやめよ

勝間 私は本当にリスクからリターンを得る社会にするためには、終身雇用制度をやめなければいけないと思っています。

竹中 それはどうしてですか。

勝間   結局、終身雇用制度の中では、勤務体験の中でリスクをとっても報われないんですよ。転職をすればより年収が下がる確率のほうが、日本の場合は高いです し、企業の中でリスクをとって改革をしようとか、何か新しいことをしようとしても、周りに潰されるのがオチであったり、あるいはすごく頑張って改革をして 業績を上げたとしても、じゃあ、同僚に比べてすごく頭ごしに出世できるかだとか、ボーナスが上がるかというと、ほんの気持ちぐらいしか変わらないわけです ね。

竹中 それはもう現象面としてご指摘のとおりだと思います。しかし翻って、じゃあ、なぜ終身雇用、年功序列が定着してき たのかというと、それが極めて経済合理的だったからなわけですよね。つまり日本の潜在成長力は極めて高い。にもかかわらず、労働力が圧倒的に不足してい る。であるならば、社内で真っ白な人を、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで教育投資をする。だから新卒が好まれますし、特に黙って言うことを聞く体育会系 の新卒が好まれるわけです。

 それで、その人たちに教育投資をします。教育投資をするかぎりは、長く働いてもらわなきゃ困りますから年功序列にする。これは極めて経済合理性があった。どういうことかというと、やっぱりリスクはあまりなかったんですよ。

勝間 そうです。そのことにリスクがなかったんですよね。

竹中 でもしかし、いまは状況が違って、経済が右肩上がりでリスクをとらずにだれでもできますよ、という体制ではなくなっているわけです。

 終身雇用制度は自然発生的にできたわけですから、これは自然発生的に崩壊すると。修正の方向には向かっていると思いますね。


◆既得権益を守る抵抗勢力が反対

勝間 ただ、土地神話や終身雇用制度崩壊のインパクトを、政策サイドや社会システムをつくる側の人が、受け止めきれていないのではないかという懸念もあります。

竹中  そのとおりですね。だから、それはやはり今までのシステムの中で利益を得る人たちがいるわけで、その利益を得る人たちが目の前の小さな利益にこだわって抵 抗勢力になるわけです。何かシステムを変えようというときには必ず反対をしてきます。利益を奪われる、既得権益を奪われる人たちに対しては、けっこう社会 の目がやさしくて、その既得権益のために入っていけない人に対して、あまりやさしくないですよね。。

勝間 そうですね。でも、竹中さんは大臣時代。いろんな手法を使って上手にひっくり返してきましたよね。

竹中 いや、もう叩かれて、叩かれて。当たり前のことを一つやろうと思ったら、10回ぐらい叩かれましたけどね。まあ、しかし、それでもやっぱり日本の経済は、 それなりの技術力と資本力と人材を持っていて、したたかにやれる力はまだ残っているんです。しかし、その力があるうちに改革を一気に進めなければならな い。世界はもうすさまじい勢いで変化していて、グローバル競争の中で、すさまじい努力をして戦っているという事実を、残念ながら日本の社会はあまり認めよ うとしない。「まあ、日本は経済大国だから何とかなるだろう」「ソニーやパナソニックといった大会社が稼いで税金を納めてくれるから、その税金を一部使わ せてもらったら何とかなるだろう」と。そういう雰囲気がやっぱり社会に蔓延しているということですよね。

勝間 そういうことをしていると力のある企業がどんどん日本から逃げ出すわけですよね。

竹中 まったくそのとおりで、かつ、さっき言った100位の企業価値の中に入る企業の数がどんどん減ってきているということです。

勝間 そうなると、結局国民に「リスクをとれ」「貯蓄から投資へ」と、かけ声だけかけても、国民一人ひとりが自分たちの限定合理性の元に判断するとすると、動けないわけですよね。いったいどこからどう解き明かせばいいのでしょうか。

竹中 これはまさしくシステムを変えるわけですから、システムを変えるっていうのは全部を変えなければいけない。しかし、全部を変えることなんかとてもできないから、だからどこも変わらない。それが、やはり改革の難しさだと思いますね。

  改革をして世の中を変えていくためには、やはりセンターピン、トリガーがいるんだと思います。これですべてが片づくわけではないけれども、この一つを変え ることによって波及効果がいろいろ期待できて、波及的にいくつかのインパクトをもたらしていく。それが何なのかということが、じつは小泉改革が終わってか ら2年間、ほとんど何も提示されていないんですよね。

(収録は9月17日 つづく=6回目のテーマは証券税制)

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