2008-11-10

「幹部は全員日本人」で真のグローバル化を目指せるか?

:::引用:::
日本では国内マーケットが縮小傾向にある。経済成長は限界に近づきつつあり、人口も減少傾向。世界経済危機により 海外市場ももはやバラ色ではなくなったが、それでも多くの大企業は直接的・間接的にますますグローバルマーケットを相手に商売をしていかなければならな い。(夏野剛のネオ・ジャパネスク論)

 マクロ経済からみたときの外需依存率は14.8%(2006年)と先進国の中ではそれほど高くないが、エネル ギーや原材料、食料品など経済基盤の多くを海外に依存していることを考慮すると、やはり輸出を維持し、かつ伸ばしていくことが、今後ますます重要になるで あろうことは簡単に想像できる。

 ミクロで見た場合、問題はもっと顕著である。これまで以上ではなく、これまでと同じくらいの成長を成し遂げようというささやかな目標でさえ、海外マーケットなくしては達成できないという現実に、多くの大企業が直面している。


 「ウチは中小企業だから」「ウチはドメドメなので」という会社でも安心はできない。内需型サービス産業であっても、製造業の成長率が鈍化すれば結果的に消費が減少し、間接的に影響を受けるのは必定である。

 もちろん日本にはすでにグローバル化している企業もたくさんある。自動車産業はいわずもがなだが、ソニーのように日本企業でありながらCEOを英国人が務める企業も出現した。

 しかし、世界の中に占める日本の経済規模を考慮すると、そのような企業の例はまだまだ少ない。

■独自の哲学が求められる第3段階

 グローバル化には3段階ほどある。第1段階は国内製造輸出型。これはグローバルマーケットをあくまでも売り先の市場と考えるので、経営体制や企業哲学などはまったくグローバル化していないケースがほとんどだ。

 次に、製造拠点のグローバル化がある。人件費などの製造コストの低減を狙い工場を海外に移すパターンで、やはり 日本国内のやり方、哲学をむしろ海外に移転しようとするものとなる。この段階でも、グローバル市場は単に売り先である。トヨタ自動車を筆頭に、多くの日本 企業はこの段階だ。


 3段階目は、多国マーケットを相手にするためのグローバル企業化だ。一部の本社機能も必要性に応じて海外に移すことを厭わない段階で、ソニーなどはこれにあたる。仏ルノーと合併した日産自動車もこれに近い。

 ここまでくると、経営体制や企業哲学までもが独自性を要求される。世界で通用する、世界中の従業員を動かす企業 哲学だ。経営体制もまた、多国籍はもちろんのこと、「あ、うん」の呼吸では通じないことを前提とした、システマチックで、かつスピーディでフレキシブルな ものが要求される。

■日本中心型では新興国に勝てない

 企業成長のためのグローバル化が必要な現在、求められているのはこの第3段階だろう。なぜなら第1段階、第2段階は、品質とコストを追求すれば売れるモノを売っている企業のグローバル化であり、すでに新興国の企業がこの領域を侵しつつあるからだ。

 これからの日本企業に求められるサービスや商品の付加価値は、品質とコストは当然のこと、デザインやイメージ、 マーケティングにも反映されるストーリー性や哲学などになりつつある。そういうものを生み出すためには、対象となるマーケットを熟知し、統計的にだけでな く、直感的にも市場を理解することが必要となる。となると、幹部は全員日本人、という方がおかしく思える。

 さらに、縮小する日本経済の限界を痛切に味わいつつあるサービス産業には第1段階はなく、第2段階あるいは第3段階からとなる。ただ第2段階は、コールセンターや入力作業、一部の会計作業などのアウトソーシングに限られ、その規模は製造業の比ではない。

 となると、多くは第3段階からのスタートとならざるを得ない。第3段階では、企業のあり方そのものが問われるのだ。

 第3段階、つまりグローバル企業となり、世界マーケットを相手とする段階、というと、「そんなの日本企業は無理だし、そこまでやらなくてもいいんじゃない」という大企業幹部の意見が聞こえてきそうだ。

 確かに、日本企業の海外活動をみると、日本人が幹部として派遣され、現地法人であっても日本語で会話し、日本語のできる現地社員を優先的に雇い、権限も限られ、日本を向いて仕事をすることが多い。それでも何とかやってきた。

 こういった日本中心型では海外マーケットでの競争力は少しづつ落ちていくだろう。品質とコストだけでは、新興国企業に追いつかれつつあるからだ。

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■進出すべき市場の冷静な見極めを

 では、第3段階でのグローバル経営のために何が大切で、何を間違えてはいけないのだろうか。それは「市場の選択」と「経営体制」である。

 まず単純なことであるが、各市場での自社の競争力、優位性を冷静に客観的に分析し、優位であるところには積極的に進出し、優位でないところには進出しないことだ。

 このいい例がいわゆる「アジア幻想」にある。よく日本企業はアジアこそターゲットというようなことをいうが、ア ジアとはいったいどこなのか。マーケット間の貿易統計や文化、そして人の往来などを見ると、アジアといっても、香港、台湾を含めた中国圏とASEANでは まったく異なる市場である。さらにインド以西は、アジアに入るのか入らないのかも曖昧だ。

 これらを一体として「アジア」と呼び、その潜在的能力を過大評価したり、わずか1カ国への進出を「アジア展開」 と称する企業は多いが、もしそれを第3段階のグローバル化として言っているのならばナンセンスである。ベトナムと中国に共通性はないし、タイとインドネシ アは、同じマーケットとはいいづらい。

 アメリカとカナダは経済的にはほぼ同一圏を形成している。ヨーロッパはEUの誕生以降、急速に一体マーケット化 している。このような地域では一カ所への進出をその経済圏全体への進出の手掛かりとすることができるが、そこまでの経済圏を形成するに至ってない地域、特 に東南アジアやアフリカ、そしてインドから中東などは、冷静に、当たり前に、市場を分析していくことが必要だろう。

■英語のできない幹部は辞任すべき!

 次に、経営陣に求められる能力とスキルが変化することを覚悟しなくてはならない。多少乱暴な言い方だが、第3段階を目指す企業では、英語のできない幹部は即刻辞任すべきだ。

 なぜここまで強いことを言うかというと、日本人の場合、語学力を言い訳にするビジネスマンがあまりにも多く、あ らゆるビジネスの局面で最後のツメができないことが多いからだ。また、語学というのはやる気と努力の問題であって、グローバル化が必須の企業の幹部であり ながら、語学の習得の努力を怠るというのは、本気で会社のことを考えてないというしかない。まさに幹部失格である。

 もちろん語学ができればいいというつもりはないが、経営能力がある人ほど、もしその同じ人が英語ができるなら、ビジネスのフィールドは広がるに違いない。

 もちろん人事体系や報酬体系もグローバル化する必要がある。ただし、なんでも欧米化するのがいいというつもりはまったくない。日本企業の持つよさも十分あるだろう。

■メリハリと適材適所、適制度

 要は今のままでいいと思うな、ということだ。常に変化させ、何歳になったら役員とか、年功的な昇進体系とかいう、個々人の能力を無視した定常的なルールを作らないこと。

 長期雇用もあっていい。しかしホワイトカラーの幹部社員に長期雇用を保証したら、誰も新しいことにチャレンジしなくなる。メリハリと適材適所、そして適材適制度。

 えっ、そんなことまではうちの会社ではできない?であれば、成長を海外に求めることはやめましょう。

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