遠く離れた他大学の協力を得て、語学教育を充実させる大学がある。
外壁はピンク色、中の床はオレンジ、ソファは赤、最上階となる3階の教室はガラス張りだ。広島市郊外、安佐北区にある広島文教女子大学のキャンパスに今春、これまでと全く雰囲気の違う建物がお目見えした。
文教英語コミュニケーションセンター(BECC)。授業で使うだけでなく、昼休みや放課後には、サロンで教員と気軽に会話ができる。2階以上では 原則、日本語が使えないルール。学習アドバイザーも常駐する。映画やCD、漫画などの教材がふんだんにあり、発音が練習できるブース、ビデオカメラを借り て発表の練習ができる小部屋などを使って、自学自習ができる。
神田外語大学(千葉市)と業務委託契約を結んだ施設。同大は教員4人を含む7人をBECCのスタッフとして送り込んだ。教員が全員、英語を母語としているだけでなく、言語学や教育学などの修士号を持っている。
神田外語大では、4年前からの東北大を手はじめに、岩手大や九州大でも語学教育を手がけている。その評判を聞いた広島文教女子大の角重始学長が、導入を即断した。
人間科学部1学部の5学科だけという小さな大学だ。地方私大の経営は厳しい。初等教育学科の教員免許など、すべての学科が資格に結びつくが、それ に加えて語学力は付加価値になるという判断だった。また、「自学自習の習慣を身につけることは、将来にわたって学び続ける力になる」と角重学長。国が大学 生に必要な能力を「学士力」という言葉で提示、その一つとして語学などコミュニケーション力を掲げようとしていることも、学長の背中を押した。
10月上旬の1年生の授業。「ハーイ」と手を挙げて教室に入っていく学生たちには、教室に入るのを尻込みしていたという入学当初の姿は想像できな い。ニュージーランド出身のジーン・トンプソンさん(30)は、「新婚旅行の行き先」といったテーマで学生を引きつける。教室内は笑顔が絶えない。
BECCで授業まで受けるのは、まだ1年生限定。小学校教員になるにも英語の素養が必要な時代だけに、「そのことは意識しています」という学生が多い。施設を使いこなす1年生に、上級生からは「うらやましい」といった声もあがる。
ただ、語学を専門に学ぼうという学生に比べれば、英語を学ぶ動機が弱いことは否めない。前年度の1、2年生へのアンケートでは、「中学・高校で英 語は不得意だった」と答えた学生が52%、「嫌いだった」も43%。独自のカリキュラムが必要になっている。学習アドバイザーへの相談も、日本語でできる よう、配慮をしている。
新年度にはスタッフが増員される。「いつまでも神田コーナーでいいわけがない」と角重学長。将来、この施設をどこまで自分たちのものにできるのか。大学の評価は、卒業生の進路とともに、その点にかかっている。(中西茂)
大学は連携の時代 大学間の連携が、全入時代を迎えて加速、文部科学省も今年度から、連携を後押しする戦略的 大学連携支援事業を始めた。採択された54件には、地元同士だけでなく、武蔵工業(東京)と室蘭工業(北海道)、日本福祉(愛知)と北星学園(北海道)と 熊本学園(熊本)といった全国規模の連携や、共同での大学院設置を目指す動きも含まれている。
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿