2008-11-20

【外国人と暮らす 共生の行方】(下)読み書き教え、育てる

:::引用:::

「いつか世話になる…」高い期待

 日本人が外国人を育て、その外国人が日本人の介護を行う仕組みをつくろうと、日本に住むフィリピン人ヘルパーに日本語を教え、未来の介護現場を担うスタッフを育てる団体がある。NPO法人「てーねん・どすこい倶楽部」(東京都墨田区)だ。

  定年退職した人や子育てを終えた人たちが先生として、社会福祉法人「賛育会」(同)の事務局で週2回、教室を開いている。吉田修理事長(66)は「私たち もいつか介護のお世話になるが、介護の世界はスタッフ数が少なく、日本人だけでやろうとしても無理。1人でも2人でも介護の現場で働く人が増えてほしい」 と話す。

 日本語の指導は、日本語教育の専門家が担当。講義の前後に、メンバーがパソコンを使って、介護現場で使う専門用語の読み方や漢字 の書き順を教える。吉田理事長は、介護福祉士の資格取得に挑む人向けの特別講義を行う。指導を受けるフィリピン人は、いずれも日本語での日常会話に不自由 はないものの、読み書きが苦手だ。しかし、介護現場では、日本語の読み書きは必須条件となる。

 賛育会が運営する特別養護老人ホーム「たちばなホーム」(同)の羽生隆司施設長(51)は「現場では24時間、入居者の状況を文字で情報交換する ので、日本語が読めない、書けないのは致命的だ」と指摘。ホームで勤務するフィリピン人ヘルパーは8人。羽生施設長は、明るい性格、熱心な仕事ぶりを高く 評価しているだけに、日本語の読み書き能力の習得に期待を寄せる。

 生徒の一人、疋島(ひきしま)ヘルミニアさん(42)は来日して20年 以上がたつが、日本語の読み書きを本格的に勉強するのは初めて。教室で学び、勤務先の病院の張り紙が少し読めるようになった。「うれしかった」。来年には 介護福祉士国家試験に挑戦する予定で、スキルアップを目指している。

 吉田理事長は「介護だけでなく、農業も工業も外国人がいないと、(日本は)やっていけなくなる。技能を持った外国人を地域に引き留めるため、できるだけ協力したい」と抱負を語る。

 日本に訪れるかもしれない「多国籍時代」を見据え、教室の設置にかかわった早稲田大学大学院の宮崎里司教授(言語政策)は、こう指摘した。

 「外国人と日本人が地域でともに生きていくために、これまでとは違う新しいルールを作る必要がある。同化ではなくお互い学び合わなければいけない」(森本昌彦)


●●コメント●●

0 件のコメント: