2008-11-21

『金融危機から始まった米国の不運』 【森田レポート】

:::引用:::

日本のバブル崩壊は、金融引き締めによる不動産バブルの崩壊という流れは一緒で、その後の経済の悪化、株式市場の暴落も一緒でしたが、日本は円高に、米国はドル安にと為替は逆になりました。

一番の違いは、日本の場合は経済危機から始まったので、企業が先に努力をし、その後に金融危機が起こって公的資金が注入されました。しかし、米国の場合には『先に金融危機』が起こったことが不幸でした。

最初に金融安定化法案が一時的に評価されたのですが、その後の流れから『公的資金を注入しても、垂れ流しになって、銀行を救えない』ということでした。ここで、再びマーケットは『現在の金融政策では、金融危機は解消されず、景気も回復しない』と考えるようになりました。

特に、今回の米国の自動車ビッグスリー問題は『今の危機を端的に表している事象』です。ビッグスリーにお金を投入しても、ビッグスリーの経営問題が 解決しない限りは銀行と同じように『税金の垂れ流し』になります。そこで、マーケットは『ビッグスリーの自助努力が先』という判断をしたのではないかと思 います。それが、株式市場が上昇せず、ダラダラとした展開となった原因だと感じて、昨日もあのようなレポートを書きました。

何が言いたいのかと言いますと、銀行も企業も『自助努力が先』であり、自立出来る体制が出来上がったあとで『資金不足を補うための公的資金を注入』すれば企業は再生されるということです。もっと言いますと、景気の回復や金融危機の回復には時間がかかるということです。

では、政治に何が出来るのか

民主党が議会を征し、大統領も民主党が取りました。昔のクリントン大統領と、米国の経済危機の時には民主党の大統領が誕生するのが米国でしたので、歴史から考えれば今回のオバマ新大統領の誕生は米国の歴史通りの流れになったということです。

違いは金融危機です。この金融危機は、誰も対応出来ない早さで『津波のように、一気に押し寄せた』ことです。そのため、政府が出来ることは緊急避難的な対策となり、民主党政権となりますと『労働者保護の政策』となります。

つまり、企業が倒産すると労働者が失業しますので、単純に大企業を倒産させられないのが民主党です。基本的には減税がもっとも得意で、次が保護主義 ですが、今回はG20で保護主義はしないという合意が出来ていますので、本当に切羽詰まらなければ保護主義には走らないと思います。

いずれにしましても、政治が出来ることは『時間稼ぎ』となります。銀行に公的資金を注入したり、大手企業に公的資金を注入することですが、この間に銀行や大手企業がどこまで自分で健全化出来るかどうかが勝負の分かれ目になると思います。

今後の投資戦略

・では我々、個人投資家は今後『どういう投資方法』を取れば良いのか
社会人としての自分と、投資家としての自分は別にしなければなりません。政治が悪いことをすれば『怒り』を持たなければなりません。しかし、怒りだけを持っていたのでは人生の、そして株式投資の敗者になってしまいます。

社会人としての怒りとは別のところで『投資家としての戦略』を考える必要があります。

・どんなことを考えれば良いのか
投資家は株式投資で『出来るだけ安全に、出来るだけ大きく儲ける』ことです。その反面で『出来るだけ負ける確率を少なくする、負けた時には出来るだけ損失を少なくする』ことです。この考え方で『今の相場環境で何をすべきか』を考えるのが株式投資の勝者となります。

投資戦略

株式市場は、景気が良いから上昇する(企業業績が良いから上昇する)というのが基本になります。しかし、基本とおりに動かないのが世の中で、株式市 場も基本とおりには動きません。何故ならば、株式市場を動かしているのは表面的には企業業績ですが、裏側では『人間の欲望と恐怖心』が動かしているからで す。

したがって、株式投資の勝者は『人間の欲望と恐怖心が動かす株式市場の形』を知っている人ということになります。こんな抽象的に言われても分からないと思いますので、具体的に例を出して説明します。

もう直ぐ終わる無料体験キャンペーンでも3回(予定)に渡って人間の欲望と恐怖心がチャートで分かるというチャート解説を行いますが、欲望と恐怖心は『チャートの形』で分かります。株式市場を動かす人間とは『投資家・経営者・政治家・官僚』のことです。

今回の投資戦略を立てる時の一番良い例は、日経平均の動きです。

このチャートを見ますと、日経平均は10月からさげ続けて8日と10日に急落しています。そして、14日と15日に上がってから再び22日から急落し、28日から6日間で5日上昇しています。

この間の経済は悪いままです。では、株式市場を取り巻く実態環境が変わらないのに、どうして『株式市場は上がったり、下がったりしているか』という ことです。これが人間の欲望と恐怖心の現れなのです。具体的にはキャンペーンで行っている「30回メール」でレポートしていますので、そちらを参考にして ください。

ここでは、結果としての投資戦術だけを申し上げます。
日経平均は8000円を割り込み、NYダウも8000ドルを割り込みました。ここから恐怖心が深くなり、その後に欲望が盛り上がってきます。

多くの投資家は『どこまで下がるのだろう』と思って、下がる前に売らないともっと損をするという恐怖心から株を売ります。株を売るから株式市場は更に下がります。
これが今の状態です。

そのうちに、どこまで下がったら買っても良いのかという気持ちが生まれます。つまり、買って儲けたいという欲望が生まれます。そして、恐怖心と欲望の戦いが始まり、どこかで欲望の方が恐怖心よりも大きくなって、株式市場が上昇に転換します。

株式投資の勝者は、日経平均がいくらまで下がったら、日経平均が何日間くらい下がり続けたらという視点で株式市場の動きを見るようになります。
その答は幾つかあります。

(1)一番簡単な答の見つけ方は、何時も申し上げていますように『セリング・クライマックス』が起こることです。セリング・クライマックスとは、株 式市場が大きく下がったところで、出来高を伴って、更に株式市場が急落することですから、誰でも簡単に『転換点が探せる』シグナルとなります。

(2)問題はセリング・クライマックスではない転換点の場合です。その転換点は突然   やってきます。私はセミナーで『もう日経平均は8000円を割ら ない』と言いました。それが一昨日の米国のニュースを見て、日経平均は再び8000円を割って7000円に向かうと修正しました。

そのニュースとは、公的資金を投入しても、銀行の体質そのものが駄目なので、垂れ流しになって、公的資金が銀行再生に機能していないという専門家のコメントと、麻生総理が『選挙で負けたくないために、第二次補正予算を提出しない』というニュースを見た時です。

社会は冷徹で、ごまかしは『その場を切り抜ける』ことは出来ても、その後にもっと大きなダメージを受けます。そして、麻生総理の選択は『まさに敗者の選択』でしたので、日経平均は再びさげ始めるだろうと思ったことです。

昔から転換点は『普通のニュース』の中にあります。以前も、日経夕刊の小さな記事を見て、株式市場が転換するとレポートして的中したことがありますが、このように転換点は『突然、現れる』ものです。

つまり、昨日のようにレポートで間に合うタイミングの時もあれば、レポートを書いたあとにシグナルを感じる時もあります。

専門家の結論を鵜呑みにするのではなく、専門家の結論の根拠を読むようにしますと、自分でも変化を掴むことが出来ますので、レポートの読み方は『根拠中心』にすべきなのです。

私の現在の注目の仕方

7000円に向けて下落している時の、米国と日本の政治の動きが第一で、次は米国の企業経営者の発言、更に欧州や新興国と米国の大切がありますの で、欧州や新興国の首脳がどういう発言をするか、原油や為替がどう動くかなど、まずは株式市場を取り巻く外部要因をチェックします。

次に株式市場の内部要因のチェックです。これは『一旦リバウンドの上昇が入っても良い』という環境に、何時になるのかのチェックです。具体的には、 信用の評価損率・空売り残高の推移、外国人投資家や信託銀行(公的資金のPKO)、個人投資家などの売買動向、裁定取引の推移、専門家の見方、テクニカル 指標の買いシグナルの点灯状況などです。

ここまでチェック出来るのはプロの仕事です。投資に使える時間がないアマチュアのチェック方法としては『株式投資が怖い』と思った時、『政治家が 焦っている、必死になっている』と思った時、テレビなどが『ヒステリックに株式市場の暴落を告げている時』などが、相場の転換点と思えば良いと思います。

ここに重要なことは、相場の転換点と思っても『将来のことですから自信があるわけではない』ということです。つまり、思っても買う決断がなかなか出来ないということです。この時に、投資家の背中を押すのが『株式組入比率』です。

投資総額の20%を買おうとか、30%を買おうと思えば、仮に失敗してもまた80~70%の投資余力がありますので、十分対応出来ます。この十分対応出来ると思えば、みんなが恐怖心で一杯の時でも『買う決断』が出来ます。

この暴落は『個人投資家にとっては絶好のチャンス』と言えます。心の持ち方としては『何時、買おうか』と常に思い続けることです。思い続ければ『何時しか、買いたくて仕方がない』という気持ちになり、買う決断が付けやすくなるからです。頑張ってください。

レポート担当 : ケンミレ株式情報 森田謙一


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