2008-11-14

中国臓器仲介 移植できぬ国内状況も問題だ(11月14日付・読売社説)

:::引用:::

 臓器移植を仲介する海外ビジネスは、どこまで広がっているのか。

 警察当局が、中国で日本人への臓器移植仲介事業を手掛けていた団体の捜査に乗り出した。

 臓器移植法は、臓器の提供や仲介によって利益を得ることを禁じており、国外での行為も処罰される。きちんと実態を解明しなければならない。

 日本の警察が捜査を開始した経緯は複雑である。

 中国でも昨年から臓器売買を禁じる法令が施行されており、仲介団体の日本人代表は、これに違反したとして中国で逮捕された。しかし、裁判では移植仲介の違法性は全く審理されずに虚偽広告罪で有罪を言い渡され、国外追放となって先日帰国した。

 中国では、年間1万件以上の臓器移植が行われ、提供臓器の大半が死刑囚のものだと指摘されている。不慮の事故で脳死となった人などからの善意の提供を前提としておらず、臓器の対価として金銭が水面下で動いていることは容易に推測できる。

 移植仲介が不問とされた背景にはそうした事情もあろう。中国側が裁かなかった以上、日本側で調べるのは当然だ。

 実際に刑事責任を問えるかどうかは、中国側の捜査協力が不可欠となる。今月末に発効する日中間の刑事共助条約が機能するか、今後の試金石ともなるだろう。

 こうした問題が起こる背景には国内ではほとんど臓器移植を受けられないという現状がある。

 1997年に臓器移植法が施行されて以来、実施された脳死移植は76例にすぎない。脳死した人からの移植に、世界で例のない厳しい条件を定めているからだ。

 脳死した本人が、カードなど書面で提供意思を残していることに加え、家族の同意も必要だ。提供意思の表示能力があるのは15歳以上、ともされている。乳幼児は臓器の大きさが合わないため、国内で心臓などの移植手術を受けることは不可能に近い。

 このため乳幼児から大人まで、多くの人が移植目的で海外に渡航しているのが現実だ。

 国会には、諸外国と同様に、本人の意思が分からない時は家族の承諾で移植を認める案など、複数の改正案が提出されている。ところが一向に審議されないのはどうしたことか。

 国内で脳死移植を制限しながら外国で臓器をもらう。いや、事実上買っている。この状況をいつまでも続けるわけにはいかない。

2008年11月14日01時51分 読売新聞)

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