東京有数の繁華街、六本木。駐車場に囲まれた一角に6階建ての赤茶けたビルがぽっかりと浮かび上がる。このビルの転売を繰り返し、多くの業者が多額の“投機マネー”を得た。しかし最終的に地上げは頓挫。未曾有の不景気の今、バブルの残骸(ざんがい)をさらしている。
登記簿によると、問題のビルは平成13年、都内の会社から大手人材派遣会社社長が購入、16年に外苑タクシーに転売され、9カ月後には新宿区のコンサルタント会社に売却された。
外苑タクシーの社長(56)=脱税の罪で告発、有罪が確定=は、人材派遣会社系列の不動産会社と、外苑タクシーとの間に東京都内の休眠状態の不動産会社が介在したことにして、裏金をつくっていた。
売買価格は不明だが、人材派遣会社社長がこのビルを購入した際の根抵当権の極度額が3億4500万円、外苑タクシーに転売した際には7億円、新宿区のコン サルタント会社に転売された際には22億円もの額が設定されている。関係者は「倍々で価格がつり上がった。まさにバブル」と話す。
今回、 東京国税局に告発された不動産業者の中には「脱税の手助けはリスクが大きい。もっと報酬をくれ」と迫った者もいたようだが、「業者はほかにもいる。この話 はなかったことに」と外苑タクシーの子会社の役員は強気だったという。赤字の休眠会社を使った脱税が横行していた可能性を示すエピソードだ。
最終的にビルには18年9月に27億円もの抵当権が設定された。しかし、最後の所有者の資金がショートしたのか、20年3月に競売開始決定が東京地裁から出された。今は出入り口がふさがれ、誰も入居していない。
土地高騰に不動産業者が踊り、その結果、六本木の一等地に1000平方メートルを超す更地が生まれた。更地をまとめ買いする業者も現れず、脱税の舞台となったビルは廃虚と化した。
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