2009-01-26

タイで中国語学教育機関「孔子学院」激増、政府の南進計画に貢献 (1/3ページ)

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 【バンコク=菅沢崇】中国政府が外国での中国語普及を目指し、各国に設けている語学教育機関「孔子学院」の活動がタ イで目立ち始めた。今年からは当初の語学教育に加えて歴史、文化教育を行う計画もあり、中国に対するタイ国民の親近感を増大させ、中国の影響力拡大に一役 買っているが、一部では警戒する声も出ている。

 孔子学院は各国の大学などに開設される。タイでは2月の地方大学での新設を含め、過去2年余りで大学、高校に設置された数は13に上り、東南アジア域内では第1位、世界的にも異例の急増ぶりを示している。

  タイで初となる2006年5月に孔子学院が開校したバンコクの国立カセサート大学の場合、約10万ドルの初期費用を中国政府が支給し、学院長には同大学の 外国語学部の教師と中国政府が派遣した政府関係者が共同で就任。2カ月を1学期とするカリキュラムでバンコクの一般市民100人が、中国人のボランティア 教師らの指導の下で中国語を学んでいる。

 今年からはこれまでの語学に加え、歴史、芸術、音楽などの講義も盛り込んでいく方針で、タイ人の ノップ・ウンポー学院長は「設立後も運営補助金が支給され、タイの大学側の財政問題を解決できるのが大きな魅力だ。すでにチュラロンコン大学など名門校に も設立され、国内の設置数は飽和状態といえる」と指摘している。

 タイでは孔子学院以外にも、中国語の教育機関が03年の242校から昨年は約1100校に激増、学習者数も約5万人から約40万人に増えており、中国語熱は高まるばかりだ。

 昨年3月、東南アジアでは、中国雲南省からラオス経由でタイのバンコクに至る高速道路が開通し、中国やタイ、ラオスの首脳が「南北回廊」の開通を宣言した。中国はラオス区間については、無償で資金を援助した。

 「メコン航路」とされる水路をめぐっても、タイとラオス間の架橋工事を中国が支援するなど、中国は東南アジア地域への影響力を拡大、“南進計画”を強力に推し進めている。

 中国の存在感が年々高まる中で、タイでは一部の大学ですでに、言語や文化面での中国の影響力増大に危機感を表明する人々も出始めている。

  国立タマサート大学では、日本語学科が50人と依然として英語に次ぐ人気を博しているが、同校で日本文化を教えるワリントン・ウーウォン准教授は「学生は 外国語を道具としてみる傾向が強い。中国経済の影響の色濃いタイ社会でこのまま中国の進出が続けば、中国語の人気が高まり、日本語は中国語に負けてしま う」と懸念を示した上で「英、独、仏、中国語など人気外国語はいずれも、タイ国内に高等教育機関の教師を対象にした教師協会があるのに日本語だけはない。 日本語普及に向けて日本語教師の協会発足を促したい」と語った。

 孔子学院 中国政府が外国での中国語教師育成や中国文化普及を目的に2004年に開始した国家プロジェクト。 各国の大学と提携し、中国古代の思想家で中国の伝統文化を代表する孔子の名を冠する語学学校を開設する。10年までに500校、海外の中国語学習者の人数 を1億人(04年当時の5倍)にする目標が掲げられた。

 中国の教育機関から講師が直接派遣され、教材はすべて中国政府提供のものを使用す るのが特徴。04年11月に韓国のソウルで初めて開設されたあと、毎月数校のペースで世界各地で着実に数を増やし、昨年12月現在、日本の13校を含め、 78の国と地域で249校が開校した。

 同じく政府主導で自国語、文化を広める英国のブリティッシュ・カウンシルやドイツのゲーテ学院とは異なり、孔子学院は外国の大学などの中で活動しているため、欧米では「中国政府は外国の教壇を使って文化浸透している」と批判する声が出ている

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