県内最多の日系ブラジル人を抱える常総市で、失業問題が深刻になっている。ハローワーク常総は今年に入り、ポルトガル語による求職相談を週2回に増 やしたが、減産などに伴う解雇に歯止めがきかず、多い日には50人ものブラジル人が窓口に殺到する。国策によって日系ブラジル人労働者が急増して約20 年。空前の不況であっさり切られてしまうブラジル人を取材した。(清水康志)
日系3世のスナガ・アレックス・イサオさん(33)は昨年12月、県西のリサイクル工場を解雇された。ブラジルでは中学校教師だったが、 「ブラジルの先生はお金安い。すごく働くけど少しだけ」。妻と息子を連れて2年半前に来日。事務機器工場やブラジル人学校などで働き、毎月30万円以上稼 いできた。
昨年10月、それまで1年間働いていた部品工場をクビになった。11月から勤めたリサイクル工場も2カ月で解雇された。
ハローワーク常総を訪ねても、管内の有効求人倍率は県内で下から2番目の0・52。わずかな求人を日本人と競合するが、未熟な日本語が不利になる。「ブ ラジルに来月帰ることにした。帰っても仕事はなさそうだけど……」。1月中旬、日系人が大勢いるハローワークを、スナガさんは寂しげに後にした。
来日16年という日系2世の男性(47)は、妻と次男の3人で事務機器工場に派遣されていた。「雇用形態を見なおす」。そんな名目で昨年6月末に突然、 ブラジル人約30人と一緒に契約打ち切りに遭った。若い次男はすぐ次の仕事を見つけたが、夫婦は無職のまま半年が過ぎた。
まだ中学生以下の子どもが3人おり、ブラジル人学校の学費は毎月13万円余りかかる。解雇が待っていようとは思いもせず、辞めさせられる直前、市内に2500万円で自宅を建てた。毎月11万円のローン返済がのしかかる。
これまで貯蓄の取り崩しや通訳のアルバイトで何とかしのいできたが、失業手当の切れる来月以降は不安だらけだ。職探しに焦る中、男性は「この不況で雇用 が日本人優先になり、日系人は後回し。我々にも同じ血が流れているのに、なぜもう少し考えてくれないのか」と語気を強めた。
ハローワーク常総の相沢均所長によると、昨夏ごろから自動車部品工場や事務機器工場、住宅工場で働くブラジル人の解雇が相次ぎ、週1回だったポルトガル 語窓口を1月から週2回にした。相談者のうち、日本語ができると会社に売り込めるのは3~4割。就職に至るブラジル人は1割に届かず、日本人の3割を大き く下回っているという。
●「3K」や単純労働 5%の「市民」が支える
常総市の日系ブラジル人は昨年12月現在、3484人が外国人登録され、市民の5%を占める。県内で常総が突出しているのは、生活基盤の整備も大きい。 ブラジル人向けスーパーや食堂、教会が次第にでき、02年にはブラジル銀行茨城出張所が進出。ブラジル人学校も3校ある。
きつい、きたない、危険の「3K職場」や単純労働を中心とする労働力不足に対応するため、国は90年に出入国管理法を改正し、日系人の就労制限を撤廃した。国内には現在、30万人を超すブラジル人が暮らす。
常総近隣の工場も労働力を頼り、市内には数百人単位のブラジル人社員を抱える人材派遣・製造請負会社が数社できた。
市内の製造請負会社・宝水産業は95年ごろから日系ブラジル人を雇い、日本ハム地元工場の製造ラインを請け負ってきた。当時、同工場は業務拡張を図った が、日本人は肉の下処理など「3K」を敬遠しがちで労働力が足りず、宝水産業が請負に協力したのだという。同工場は現在約1500人の従業員中、約700 人が日系ブラジル人。うち宝水産業のブラジル人は約140人を数える。
宝水産業の武藤良生代表は「家族ぐるみで3~4年懸命に働いて帰国し、立派な家を建てるブラジル人が多い。日本に永住するブラジル人も出てきた」と話す。
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