2009-01-23

ネットショップ出店は規制すべき? 北京市の新規制に浙江省など各地は否定的

:::引用:::

 北京市が打ち出した「ネットショップ新規制」についての論議が絶えない中、ネットショップポータルサイト大手「淘宝網」の本拠地である浙江省が初めて、明確な対応策を示した。

 2008年12月29日、浙江省工商行政管理局は「ネット市場の急速で健全な発展を大いに推進することに関する若干の意見」を発表。「まだ登録条 件を備えていない特殊な者、および一時的にネット上で商品取引とサービスを行う者については、ネット市場の運営者が実名認証と管理を行う」と定めた。これ は、個人出店者に対しては営業許可証の取得を強制しないことを意味している。

 北京でネットショップの経営を始めて4年になる楽さん(仮名)は12月30日にこのニュースを知った。「浙江省のやり方に大賛成。浙江のネットショップ経営者がうらやましい」と話す。

 数カ月前に北京市工商局が発表した規定を、楽さんは今も受け入れられないでいる。2008年7月、北京市工商行政管理局は「『北京市情報化促進条 例』を徹底して実施し、電子商取引の管理監督を強化することに関する若干の意見」(ネットショップ新規制)を発表。北京市内でインターネットを利用して経 営活動を行う事業所および個人に対し、法律に従って営業許可証を取得するよう定めた。

 「ネットショップ新規制」は、8月1日に施行。2008年中に手続きするよう求められた。しかし、楽さんは「この規定を知ってはいるが、今のところ誰も営業許可証の取得を強制していないので、まだ手続きをしていない」と話している。

 年末になっても、楽さんらネットショップ経営者は、工商局に行って営業許可証取得の手続きを取ろうとはしなかった。そのタイミングで浙江省が新措置を発表したことで、北京市の「ネットショップ新規制」は、ますます軽視されることになった。

規制緩和の裏に金融危機の影響

 「浙江省の工商局のほうが北京より一歩進んでいる」。インターネット調査会社の北京正望咨詢有限公司の創業者で、ネットビジネスに詳しい呂伯望氏 は、浙江省の措置は少なくとも二つの点で評価できるとしている。一つは、インターネットと従来の経済活動との差異を認識しており、一律に処理していない 点。もうひとつは、強制的に制限するのではなく、出店者の利益を守ろうとしている点だ。

 しかし、それでもまだ浙江省工商局の通達は「表現が控えめだ」と呂氏は言う。呂氏によると、「特殊な者や一時的にネット上で商品取引とサービスを 行う者」というのは、少数派に見えるが、実際にはほとんどの個人出店者がこのカテゴリーに入り、大手出店者の比率は非常に低いのだという。

 正望咨詢の統計によると、C2C(個人消費者間取引)の9割近くは小規模出店者が占めているが、売上高は全体の約3割にすぎない。うち、月間売上高2000元以下の出店者が全体の3分の2を占める。

 今回の措置について、浙江省工商局は「ネットショップの出店で就職問題を解決してもらいたいと考え、こうした通達を出した」と説明、「特に大学新 卒者、レイオフされた者、身体障害者や農家の人たちが、ネットのスピード性や手軽さ、コストの低さなどをうまく利用して、淘宝網などのネットショップサイ トで起業できるよう支援したい」と話している。

 浙江省が個人出店者の規制を緩和したのは、金融危機の影響が実体経済に及び、世界的に不景気になったためというのが業界の大方の見方だ。厳しい経済情勢の中、内需拡大と雇用問題の解決は、国や地方政府にとって差し迫った問題となっているのだ。

 正望咨詢が昨年10月に発表したC2Cサイトの出店者に関する調査報告によると、2008年9月現在、淘宝、拍拍、易趣(eBay中国)の3サイ トへの出店者は117万人に上り、42万人に就業機会を提供したという。この4分の1が身体障害者、レイオフされた者および社会経験のない新卒者だった。 これについて淘宝は、「40万人近くが当サイトを利用して就職問題を解決しており、この40万人を通してさらに100万人以上が物流やオンライン支払など の就業機会を提供された」とコメントしている。

 また、浙江省の今回の措置は、個人の就職問題の解決だけではなく、それ以上に同省に本拠地を置く淘宝とその親会社の阿里巴巴(アリババ)を支援する目的があったという見方もある。何といっても、アリババは“電子商取引の都”杭州市を代表する企業だからだ。

 事実、アリババの馬雲CEOは昨年8月3日、杭州市で開かれた第二回APEC(アジア太平洋経済協力)中小企業グローバルビジネスサミットで、ネットショップ新規制に話が及んだとき、「すでに関連部署とは話がついており、各出店者は安心してよい」と述べている。

広東省でネットショップ取り締まり

 楽さんは「最初に『ネットショップ新規制』について知った時、淘宝に問い合わせたが、まだ新規制に関する通知は来ていないとのことだった」と話している。このため、しばらくは状況を見守ることにしたのだという。

 北京市工商局が公布した「ネットショップ新規制」には、世論では反対の声しか聞こえず、その目的や実現性について多くの疑問が寄せられている。楽さんも「この規定には実質的な影響力は全くないもの」と考えていた。

 ところが、2008年9月、淘宝のサイトでゲーム通貨や携帯電話用SIMカードなどを販売していた出店者に対し、広東省肇慶市工商局は捜査を進 め、3万元の罰金を科した。インターネットを利用し、法で定められた営業許可証を取得しないまま商品を販売し、「無認可経営捜査取締法」に違反したためと している。

 広東省で初のネットショップ取り締まりが行われたことは、楽さんにとって大きな驚きであった。しかし楽さんは不安が増すものの、手続きの煩雑さや営業許可証取得後の管理費支払いなどコスト増を考え、このまま無許可でやっていくことにした。

 一方、北京市以外のネットショップ経営者も、地元の工商局の出方に関心を持ち始め、広東省でのケースを機に北京の規定が全国に広まるのではないかと心配し始めた。しかし、幸いにも大部分の地域に追随の動きは見られなかった。

 浙江省以外にも、重慶、江蘇、海南、湖北など多くの省市が、ネットショップの営業許可証取得を強制しない方針を表明しているという。また、浙江省 が通達を出した12月29日、瀋陽市工商局も「瀋陽の経済発展促進に関する若干の措置」を公表し、一般市民が自宅でネットショップを運営することについて は制限しないと定めた。楽さんは「もしも北京が強制執行に出たら、登記地を浙江に移すよ」と話している。

 これも「ネットショップ新規制」の実施が困難な理由の一つだ。インターネットの持つボーダーレス性のせいで、出店者の実情把握が難しいからだ。

 呂伯望氏は昨年末、「この半年間、北京でも強制執行の動きは見られなかった」と述べ、「すでに年末でもあるし、このままうやむやになるのではないか。すべてのネットショップをある日突然、一斉捜査することはあり得ないだろう」現在、地域ごとに政策が異なることについて、アナリストは「ネットショップ新規制」を制定した真意は、マーケットを規範化し、ネット詐欺や著作権侵 害などの違法行為を取り締まることにあるとみている。また工商総局も、まず北京をモデル地区として施行した後、様子をみて全国に規定を拡大する考えだとい う。

 ただし、呂伯望氏は「今はまだ取り締りを厳格化する時期ではない」と考えている。ネットショッピングの市場規模がまだかなり小さいからだ。

 マーケティングリサーチ大手の艾瑞諮詢(iResearch)のデータによると、2007年の中国のネットショッピング市場規模は561億元で、 うちC2C取引は518億元だった。小売市場全体に占める比率は1%にも届かず、米国の5%、韓国の8%と比べてまだまだ小規模だ。

 呂伯望氏は「中国のC2C取引は、今後長年にわたって大きく成長する」と見ており、「機が熟し、適切な対策が見つかるまでは強制的な方法で規制すべきではない」と指摘する。強制執行をしても、だれも登記しない可能性が高いからだという。

 こうしたことから、中国のネットショップは当面はポータルサイトによる管理が望ましく、浙江省の措置もこれを黙認した形となっている。大手サイト はユーザーの実名やその他情報(身分証明書、バンクカードなど)を検証し、また信用体系を確立することで、詐欺被害の発生を防止する方法をとっている。

(劉方遠=21世紀経済報道、上海発)


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