不況の中で多くの人が職を失い、新しい仕事を探している。一方で、介護業界は人手不足にあえいでいる。介護人材の確保を、雇用対策の柱の一つに据えるのは当然だろう。
厚生労働省が、他産業からの離職者を介護業界の担い手として養成するため、プロジェクトチームを省内に発足させた。
当面の対策として、介護福祉士やヘルパー1級の資格取得を公費で支援し、介護の未経験者を雇用した事業所に1人当たり50~100万円を助成する。ハローワークに福祉人材コーナーを設け、介護関連求人を積極的に紹介する。
これにより、新たに2万6000人の介護職員が生まれる、と厚労省は目算している。プロジェクトチームは、さらに追加施策を練り、財源の確保策を検討する。
失業対策を所管する旧労働部局と、介護を所管する旧厚生部局の連携も問われよう。これまでの縦割り行政を排して取り組まなければならない。
介護の人材は、いくらあっても足りないほどの状況だ。
厚労省の推計では、介護が必要と認定される高齢者は5年後、今より150万人増えて約600万人となる。これに伴い、現在約120万人いる介護職員を160万人まで増やす必要がある。
高齢化が一層進行する2025年には約250万人の介護職員が要るとも試算されている。年間10万人近いペースで増やさなくてはならない。
介護保険制度がスタートした2000年は、やはり不況で雇用の受け皿となり、05年まで介護職員は年10万人ペースで増えていた。だが、その後に増加数は年5万人を割っている。介護需要の拡大に追いついていない。
原因は待遇の悪さだ。介護職員の給与水準は全産業平均の7割程度にとどまる。やりがいを感じて介護業界に飛び込んだ人も、家族を養うために、割のいい他の仕事に転職するケースが多かった。
今回の不況は、人材を介護業界に呼び戻せるという意味では、好機と見ることもできよう。
だが、不況時の雇用の受け皿にとどまることなく、好況時も人材が集まるような待遇改善策を同時進行で打ち出すべきだ。
09年度から介護報酬の3%アップが決まったものの、これだけでは十分な待遇改善は難しい。
保険料の上昇を抑えつつ介護報酬をさらに引き上げるには、確固とした税財源が要る。社会保障税の議論を怠ってはならない。
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