2007年問題において、技術者の伝承が大きくクローズアップされたが、その後も多くの課題が山積している。多くの企業で定年延長や属託・再雇用などで問題を先送りしているケースが多く、技術伝承が確実に行われているのはむしろ希なのではないだろうか。
そんな環境の中で、技術伝承に取り組むベンチャー企業も登場している。
日経新聞08年9月17日17面が<製造業の技能 ネットで伝承 SNS使い動画・音声で解説>と題し、関西のソフト会社2社の取り組みを紹介していた。
(ダイジェスト記事)http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=AS1S13001%2016092008
<一つの画面で動画や音声などを併用し、マニュアルやビデオより分かりやすく技術を解説できる> という特徴があるという。
どのようにSNSを活用するのか記事に具体的な記述がないので、紹介されていたインタークエスト社とテクノツリー社のWebサイトを確認してみた。しかし、具体的SNSのソリューションが見つからなかった。
情報がないので想像の域を出ないのだが、技術者の実務を動画で見せながら、解説テキストの記述があり、SNS的に質問などの書き込みと回答ができるしくみではないかと推測した。
技術者の技の伝承で最も難しいのが、本人も無意識に行っている動作一つ一つにも実際には意味が込められていると言うことなのだ。実際にはその部分が重要だったりする。
その点に関しては、3年前に毎日新聞社「週刊エコノミスト」2007年問題特集に詳しく執筆した。
「溶接ロボットとラーメン作りで考える2007年問題の解決法」
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2005/07/2007_cb00.html
上記でも記したのだが、無意識の技術伝承のためには、本人の所作をつぶさに観察し、詳細なインタビューを重ねていくといった丹念な分析作業が必要となる。本人の陰となり、分析を重ねていくので「シャドウイング」と呼ばれる。
その点は、テクノツリー社のWebサイトに気になる表記があった。
http://www.technotree.com/contents/technical.html
ナレッジアナライシススタッフ(Knowledge Analysis Staff)という担当者が存在しているようなのだ。もしかすると、それが「シャドウイング」を行うのかもしれない。
SNSという技術は単なるプラットフォームに過ぎない。重要なのは、どのように伝承すべき技術を見える化(可視化)するかということで、それはナレッジマネジメントの永遠の課題であると言える。
日経新聞で紹介されたベンチャー企業の取り組みは、産業界の大きな課題に対してSNSという今日的なテクノロジーを活用した点を評価するのではなく、「ナレッジアナライシススタッフ」という人力による地道な見える化のしくみが組み込まれている点を評価すべきであろう。
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