2008-09-25

IT機密開示 日本の財界、中国の新規制に懸念

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「知財保護に問題」

3日、北京で中国商務省との会議に臨む張富士夫・トヨタ自動車会長ら財界首脳(滝沢康弘撮影)

 【北京=滝沢康弘、寺村暁人】日中経済協会(会長=張富士夫・トヨタ自動車会長)の訪中代表団は23日、北京で中国商務省の幹部と会談した。

 中国が検討している、情報技術(IT)製品に機密情報の開示を強制する新たな制度に対し、日本の経済界として強い懸念を伝えた。しかし、中国側は 予定通り2009年5月に新制度を導入する構えを崩さなかった。世界的に例のない制度に日米欧の反発は強まっているが、今後の交渉は難航が予想される。

平行線

 「ハイテク分野の貿易・投資の協力にとって阻害要因となる恐れがある。知的財産権保護の観点からも影響が大きい」

 上島重二・日中経済協会副会長(三井物産顧問)は、会談で中国側に対し、制度の見直しを強く求めた。

 しかし、中国商務省の呂克倹アジア局長は「制度は国際基準に沿っており、WTO(世界貿易機関)の規定にも合致している」と真っ向から反論した。知的財産権についても「制度運用に当たっては守秘義務も規定されている」と述べ、議論は平行線をたどった。

 新IT規制は、IT製品に組み込まれているソフトウエアの設計図であるソースコードを強制的に開示させるもので、企業の知的財産権が脅かされるほか、輸出する国にとっては自国製品が「丸裸」になることで安全保障上の問題も懸念される。

 さらに、例えばマイクロソフトの基本ソフトであるウィンドウズのソースコードが外部に広まれば、ソフトの弱点を突いたハッカーやコンピューターウイルスの攻撃が激増する恐れが高いなど、「世界中が反対する内容」(大手精密機器トップ)となっている。

実施細則

 中国側は会談で、新制度の狙いについて「ネット上での詐欺的な行為や、有害情報の流通を防ぐこと」と説明した。

 対象になると見られる製品も、インターネットやネットワークに関連したものが多い。ソフトウエアのソースコードを当局が把握することで、中国国内での情報統制などを強める狙いがあるとみられる。

 中国が新制度について、国内の安全保障上の意味合いを重視しているとすると、容易には制度を撤回しないことも予想される。

 このため、当面の焦点は、新制度の実施細則だ。最終的にどういった製品にどのような規制がかかるかが、そこで決まるためだ。

 細則は当初、5月にも公表予定だったが、新制度に対する日米欧の反発などを背景に延期されている。経済産業省は、深刻な規制をかける細則にならないよう交渉を進める方針だ。

特別扱いも

 ただ、中国はこれまで様々な規制で、特定の企業を例外扱いするケースがあった。このため、各国は足並みをそろえて中国側に制度撤回を求める一方、自国企業に不利にならないよう、2国間でも交渉するという「協調と競争の関係にある」(電機業界関係者)。

 中国商務省の張驥・産業局長も23日の会合で「具体的な製品で問題があれば、商務省産業局としても対応する」と述べ、交渉に含みを持たせた。

 交渉が不調のまま09年5月の時間切れを迎えれば、日本などがWTO協定違反として中国を提訴する展開も想定される。

中国のIT製品規制を巡る経緯
2002年8月中国が自動車、家電などを対象に製品安全確保を目的とした強制認証制度を導入
  07年8月中国がWTOに強制認証制度にIT製品を加えると通報
  08年1月中国が新しいIT製品規制となる強制認証制度の概要を公表
  08年3月日米欧がWTOで新たな強制認証制度に懸念表明
  08年5月中国が新強制認証制度の実施細則の公表を延期
  08年9月日中経済協会が訪中し新制度に懸念表明
  09年5月中国が新強制認証制度を実施予定

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