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中国営業こぼれ話(4)
中国で働く日本人営業マンはいくつかに分類されます。
(1)職場は日系企業。顧客は日系企業または日本人
(2)職場は日系企業。顧客は中国企業、他の外資企業または中国人
(3)職場は中国企業または他の外資企業。顧客は日系企業または日本人
(4)職場は中国企業または他の外資企業。顧客は中国企業、他の外資企業または中国人
(1)がもっとも多く、(4)はほとんどお目にかかりません。(1)の場合、中国に居ながら社内外はほとんど日本語が共通語であり、営業スタイルも日本 のやり方がほぼ通用するケースが多いようです。(2)では、社内外は中国語を共通語として、現場は中国人営業マンに任せ、日本人はマネージメントに徹して おり、営業スタイルは中国的なスタイルを取らざるおえないことが多いようです。
そんな折、サービス業界の中国企業に入り、業績を伸ば す(3)型の日本人営業マンと最近知り合いました。中国企業にとって、日系企業は優良な顧客なようです。「品質やサービスへの要求は厳しいが、支払いがよ く、一度入れば継続して仕事をくれる」と、日系企業と取引をする中国企業の総経理の意見はほぼ共通しています。
しかし、なかなか中国企業が日系企業に入り込むことができません。そこで、中国企業でも、日本人営業マンを雇うケースが出てきました。
彼が入社したのは2年前。同社では日系企業に入り込めず苦戦していました。日本で同様の仕事をした経験があり、高い中国語能力により、彼は採用されました。契約は5年間で安定して働けること、業績によるインセンティブも以前より条件がよかった、と彼はいいます。
なにもないゼロからの立ち上げでした。当初は苦戦しましたが、地道に、日系企業が求めるきめ細かなサービスとフォローを続けました。徐々に、日本人ネッ トワークの口コミもあり、順調に売り上げを伸ばし、2年足らずで、彼の部門は同社での売り上げの40%を占めるまでになりました。
数百社に及ぶ顧客リストができてきました。業績によるインセンティブのお陰で、日本にいるときより収入が増えました。しかし、業績が伸びたら、別な悩みも出てきました。会社の上層部が、彼のもっているノウハウと顧客リストを提供してほしい、というのです。
企業として、個人のノウハウを全社に展開し、より全体の営業効率を上げることは当然です。しかし、彼には迷いがあります。自らのノウハウと顧客リストを 提供してしまえば、自ら開拓した顧客が別の部門に奪われるのではないか、結局は使い捨てられるのではないか、という思いが脳裏をよぎります。新労働契約法 が施行されて労働環境は良くなっているとはいえ、多かれ少なかれ、中国で働く中国人営業マンも同じ思いを持っているようです。
中国人 上司の面子を立てつつも、微妙な駆け引きが続きます。社外では徹底して日本的なサービスを提供しながら、社内では中国流のビジネススタイルで自己主張しな ければいけない日々に多少疲れた、ともいいます。しかし、緩やかに話す言葉に、悲壮感はありません。中国において独力で10年間生き続ける力強さを感じま す。
「なぜそこまでして、中国企業で働くのですか?」「何だかんだいっても、日本の会社より評価が明確ですから、やりがいはありますね。別に中国企業に拘っている訳でもないですよ。誰か投資してくれたら独立も悪くないですね。」彼は気負いなく淡々と答えた。
筆者:宮原武史(みやはらたけし) 、軟脳軟件北京有限公司董事・上海分公司総経理
提供:ウェネバービジネス
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